VEON Ltd.VEON

時価総額
PER
移動体通信とデジタルサービスの大手。モバイル、デジタル金融、デジタルヘルスやインフラ投資を展開。ADS比率を2023年3月に1:25へ変更。2025年3月の事業結合契約。パキスタン、バングラデシュ、カザフスタン、ウズベキスタン、ウクライナを中心に展開。

事業内容

VEON Ltd.は、パキスタン、バングラデシュ、カザフスタン、ウズベキスタン、ウクライナなど主に成長・フロンティア市場で通信事業を展開する企業です。同社は携帯を中心とした音声とデータ通信を中核に、固定回線やブロードバンド、端末販売に加え、モバイルを軸としたデジタルサービスを提供しています。

主要な顧客は個人の携帯利用者と中小企業で、月額料金や通信の利用料が同社の収益基盤です。同社は端末販売や通話の接続料に加え、モバイル金融や定額のデジタルサービス収入を伸ばすことで収益の多角化を図っています。

事業は国別のモバイル事業を中心に、固定ブロードバンドやネットワーク関連のインフラ事業、デジタル資産の開発といった複数のセグメントで構成しています。同社はモバイル金融サービス、電子商取引への出資やデジタルヘルス、コンテンツ配信などのプラットフォーム事業にも投資し、顧客あたりの収益を高める取り組みを進めています。

経営方針

同社は成長の柱として通信インフラの拡大とデジタル収益の拡大を両立させることを目指しています。具体的には、2024年の設備投資比率(資本支出÷売上)は20.6%(ウクライナを除くと18.7%)で、2025年は17–19%台を目標にしつつも、市場機会によっては追加投資を行う余地を残しています。また、直近のデジタル直接収入は2024年末時点で11.5%に達しており、ARPU(利用者あたり収益)向上とデジタル売上の引き上げを通じた収益成長を狙っています。

同社は差別化のためにネットワーク拡充と自社デジタルサービスの厚み付けに重点投資しています。具体策としては4Gの展開を優先し、通信品質改善とカバレッジ拡大によりモバイルデータ利用を増やす方針で、端末普及や料金の手頃化施策も併せて進めています。差別化戦略には自社で設計・提供する「デジタル・オペレーター」モデルを用い、モバイルエンタメ、モバイルヘルス、教育、金融サービスなどを組み合わせて顧客の支出を取り込む「マルチプレイ」戦略を採っています。加えて塔(タワー)資産の売却やリースバック等の「資産ライト」戦略により運用効率を高める施策も実行中で、実例としてTNS+の売却やパキスタンでのインフラを外部に移し長期リースで利用する合意が挙げられます。

同社は新市場や事業拡大でも明確な行動を取っています。代表例として、2025年3月18日に発表した契約では、キーウスター(Kyivstar)を親会社側に移管する事業結合の枠組みが合意され、同事業の親会社が米ナスダック上場(ティッカー候補「KYIV」「KYIVW」)を目指す計画があります。これにより地域事業のポートフォリオ整理と資本効率改善を進める一方、固定ブロードバンドやクラウド、デジタル金融サービスといった新分野への拡張や、バングラデシュやパキスタンなど既存市場での追加的成長機会の獲得を狙っています。取引や事業売却・買収は運用効率と資金調達の観点から戦略的に行われています。

同社は技術革新と安全対策にも注力しています。ネットワーク面では4Gの普及を最優先としつつ、将来的な5G展開の検討・準備も進め、デジタルサービスの基盤を強化しています。デジタル分野では自社アプリやプラットフォームの利用者拡大に向けた投資を継続し、モバイル決済やヘルスケア等のサービスで月間アクティブユーザーを増やすことを目指しています。加えてサイバーセキュリティ強化やグループIT・サイバー部門の統括、ISO認証取得など運用の堅牢化にも取り組んでおり、事業継続性と顧客信頼の確保を重視しています。