PagerDuty, Inc.PD

時価総額
$12億
PER
デジタルオペレーションプラットフォーム提供の大手。インシデント管理と運用自動化プラットフォームを展開。2023年11月にSaaS企業を2970万ドルで買収、2024年3月にFedRAMP“In Process”承認。北米中心にEMEA・アジア太平洋・日本で展開、2025年1月期に国際売上比率28%。

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企業概況
106文字)
業績概況
テーマ
1項目)
ブランド
ライバル企業
1社)
同業種の日本企業
2社)

事業内容

PagerDuty, Inc.は、企業のシステム障害や運用上の問題をリアルタイムで検知して迅速に対応するためのクラウド型プラットフォームを主に提供しています。アラートの振り分けやオンコール体制の管理、対応ワークフローの自動化などを通じて、サービス停止や顧客影響を最小化することを狙っています。

同社の主要な顧客は開発チーム、IT運用、カスタマーサポート、セキュリティ運用などで、大企業向けは直販で価値を示しながら販売し、中小企業ではセルフサービス経由で導入が進み利用拡大につながることが多いです。収益はサブスクリプション型の継続課金が中心で、海外売上の拡大(欧州やアジア太平洋、日本への展開)や米国の公共部門進出(FedRAMP取得による拡大)を成長施策としています。

事業は核となるデジタル運用プラットフォームに加え、オートメーションやプロセス改善、事後分析を補う製品群で構成されています。買収したRundeckやCatalytic、Jeliといった技術を取り込み、監視データや業務フローと連携して問題検知から復旧、原因分析まで一貫して支援するラインナップを揃え、顧客の導入・定着を支えるカスタマーサクセス体制にも注力しています。

経営方針

PagerDutyの成長戦略は、サブスクリプションの拡大と既存顧客からの追加販売で売上を伸ばすことにあります。直近の通期売上は2025会計年度で約4億6,750万ドルと着実に増加しており(2024年は4億3,070万ドル、2023年は3億7,080万ドル)、同社はこれをさらに拡大して市場浸透率を高めることを目指しています。市場機会は約500億ドル、潜在ユーザー数は約8,700万人と見積もられており(現在の世界シェアは約1%)、同社はこの母数に対する導入率向上を成長の鍵と位置づけています。一方で利益化にはまだ課題があり、2025会計年度の純損失は4,270万ドルで累積欠損が約5億9,520万ドルあるため、成長投資と収益性のバランスをとることが重要な経営課題です。

重点投資分野として同社は営業・マーケティング、人材・カスタマーサクセス、製品開発、技術基盤、そして買収・戦略投資に資源を配分しています。具体的には社内外の営業チーム(インサイドセールスとフィールドセールス)とカスタマーサクセスを拡充して大口企業の導入を加速し、製品面では統合(パートナー連携)や自動化、運用ワークフローの拡張に投資することで差別化を図っています。実際にRundeckやCatalytic、Jeliなどの買収を通じて自動化やインシデント分析機能を取り込み、Jeliについては買収対価約2,970万ドルで機能強化を行っています。これらの投資は「導入の速さ」「複数部門で使える横断的なワークフロー」「他システムとの連携の幅広さ」での差別化を目指す施策です。

新市場の開拓では国際展開と公共セクターの拡大に注力しています。既に海外(EMEA、アジア太平洋、日本など)からの売上は2025会計年度で全売上の約28%を占めており、同社は現地拠点やパートナー網を使ってこの比率をさらに高めることを目指しています。加えて米国の公的機関向け市場では、FedRAMPの取得プロセス(“In Process”ステータス)を進めることで連邦政府案件へのアクセス強化を図っており、これにより大型契約や長期契約の獲得を狙っています。資本政策面では株主還元と株価安定を目的に、2025年3月に最大1億5,000万ドルの自社株買い枠を設定しており、財務体力を背景に成長投資と株主価値向上を両立しようとしています。

技術革新に関しては、信頼性・拡張性・セキュリティの強化とともに人工知能(AI)・機械学習(ML)を活用した機能開発を重視しています。具体的にはインシデント発見から対応、事後分析までの一連の運用を自動化・高速化するための研究開発投資を継続し、生成AIなどの新技術を製品に組み込むことで運用効率や意思決定支援を高めることを目指しています。またシステムアーキテクチャや可用性、性能改善、セキュリティ対策にも相当な資金と人材を投入しており、これらは大企業や公共機関といった高い信頼性を求める顧客を獲得・維持するための必須施策と位置づけられています。