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前田工繊JP:7821
事業内容
前田工繊は、繊維と樹脂を素材にした土木・建築資材や農業資材、不織布の製造・販売を中核とし、さらに自動車用の軽合金鍛造ホイールなど産業向け製品も手掛けるメーカーです。盛土補強材や土木シート、排水材、植生製品、コンクリート補修材といった環境・インフラ向け製品に加え、不織布を原材料とする各種製品群を提供しています。
同社の主要な顧客は建設会社や自治体、農業関連事業者に加え、自動車メーカーへの受注生産(OEM)やアフターマーケット向けの販売チャネル、二次加工メーカーや医療・衛生分野の企業などです。収益は土木・建築・農業資材や不織布の販売が中心で、自動車用ホイールのOEM供給と一般販売が重要な収益源になっています。
事業は「ソーシャルインフラ事業」と「インダストリーインフラ事業」に分かれており、それぞれで製品ラインを展開しています。ソーシャル側ではジオシンセティックスや合成樹脂製品、農業・防災向け資材や海外生産の合成木材などを扱い、インダストリー側では高級鍛造ホイールやクリーンルーム用ワイピングクロスなど工業用繊維製品を設計・製造・販売しています。
経営方針
同社は成長戦略の柱を合併・買収(M&A)、海外事業の拡大、人材育成の三つに置き、企業価値の最大化を目指しています。2000年以降で17件のM&Aを実行してきた実績があり、業績管理には営業利益や営業利益率、EBITDA、自己資本利益率(ROE)、投下資本利益率(ROIC)といった客観的指標を用いて進捗を評価しています。明確な数値目標は開示されていないものの、これらの指標を通じた収益性向上と海外売上比率の引き上げを狙いとしています。
同社は重点投資分野として、社会インフラ向け資材と産業向け製品の両面を挙げており、差別化は繊維と樹脂の技術を“混ぜる”ことで生まれる独自製品群にあります。具体的には、土木用のジオシンセティックスや排水・植生資材、不織布を使った衛生・産業用途製品、高付加価値の鍛造ホイールなどを挙げ、品質向上のために設計段階での品質管理強化や耐久性試験の徹底、品質保証部門の増強といった施策を進めています。購買面でも原材料価格変動やサプライチェーンリスクに対応するため、調達ルートのグローバル化と購買部門の強化を図っています。
同社は新市場開拓のため海外での生産・販売体制を強化しています。2011年のベトナム子会社設立や、2013年のBBS関連事業の組み入れ、2016年と2020年の海外企業との販売提携などで欧米やアセアンを中心とした販路拡大を進めており、今後は海外子会社の工場増設などで生産能力を増強し、地域別に需要を取り込む計画です。また、海外企業との業務提携を通じて販売網を広げ、M&Aで事業領域や技術を補完することで新規市場の創出を目指しています。
同社は技術革新にも注力しており、研究開発体制の強化と販売部門との連携による商品化のスピードアップを図っています。国の防災・減災や社会資本老朽化対策との整合を重視した研究を進めるほか、鍛造ホイールの高度な製造技術、カット加工や超純水洗浄などの産業技術を磨くことで付加価値を高めています。人材面では研修制度の整備や評価制度の見直しを行い、即戦力の中途採用と中長期的な人材育成で組織の実行力を高めることを目指しています。