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JX金属JP:5016
事業内容
JX金属は、銅やレアメタルを原料とする先端素材の開発・製造・販売を行う企業で、主力製品は半導体用スパッタリングターゲットと圧延銅箔です。同社は資源開発や製錬・リサイクルも手掛け、原料から製品までつなぐサプライチェーンで安定供給を支えています。
同社の顧客は半導体メーカー、半導体製造装置メーカー、基板やコネクタを作る電子部品メーカー、スマートフォンや自動車メーカーなど多岐にわたります。収益は半導体材料、情報通信材料、基礎材料の3つのセグメントで構成され、特に半導体材料と情報通信材料を成長の主軸に据えています。長年の取引と品質力により、主要顧客から高い評価を受けている点も収益の安定に寄与しています。
事業の中身を詳しく見ると、半導体材料セグメントでは高純度のスパッタリングターゲットやタンタル・ニオブ系粉末などを扱い、製造拠点を米国・台湾・韓国に置くことで顧客近接の供給体制を整えています。情報通信材料セグメントは高機能な圧延銅箔や銅合金を提供し、特にフレキシブル回路向けの薄くて屈曲に強い銅箔が強みです。基礎材料セグメントではチリなどの鉱山への参画や製錬所での銅地金生産、リサイクル拡大や脱炭素を意識した製錬を進め、資源から再利用まで一貫した体制を構築しています。
経営方針
JX金属は「装置産業型企業」から「技術立脚型企業」への転身を掲げ、半導体材料と情報通信材料を成長のコアに据えた長期ビジョン(2040年)を掲げています。市場環境を踏まえ、半導体ロジック・メモリ市場は2023〜2027年で年率約7.1%の成長が見込まれ、特に最先端ロジックは年率36.9%という高成長が予想されています。この需要を取り込むため、同社は半導体用スパッタリングターゲットの生産能力を2028年3月期に向けて2024年3月期比で約1.6倍に拡大するなど、市場成長を上回る利益成長を目指しています。
重点投資は、半導体用ターゲットや圧延銅箔などの主要製品ラインと、それらを支える上流・下流の生産体制です。具体的には、既存の磯原工場に加え茨城・ひたちなかで新工場を建設し、米国アリゾナ州メサの新工場(2024年11月竣工)を含めて日本、台湾、韓国、米国に製造拠点を配置し、主要顧客に近接した供給体制の強化を進めています。差別化は高純度化や表面制御、組成設計、評価分析などの技術力と長年の品質実績により図っており、顧客の高度化する要求に応えることで競争優位を維持しています。
新市場開拓と事業拡大では、次世代薄膜材料(化学気相成長や原子層成長に使われる材料、CVD/ALDと呼ばれる手法向け)やInP基板、CdZnTeなどの結晶材料の事業化・規模拡大に投資しています。東邦チタニウム茅ケ崎や日立事業所への生産・開発設備導入、ドイツのTANIOBISでの生産再編と設備導入などを進め、次世代のグローバルトップシェア製品の創出を目指しています。また、リサイクル原料の安定確保に向けて台湾、米国、カナダ、ドイツ、シンガポールに集荷拠点を置き、2024年7月に三菱商事と合弁で設立したJXサーキュラーソリューションズを通じて回収・再資源化の体制強化を図っています。
技術革新については、同社は自動化・生産性向上のため最新鋭設備を導入するとともに、高純度化や表面制御、組成設計、分析評価技術の強化に注力しています。Mesa工場での工程自動化や、CVD/ALD材料の開発拠点整備、結晶材料の製品化推進などを通じて次世代用途を取り込み、サーキュラーエコノミーや脱炭素といった社会的課題にも対応する技術基盤を構築しています。これらにより、同社は持続的な高収益体質の実現とグローバルリーダー化を目指しています。