デジタルグリッドJP:350A

時価総額
¥279億
PER
18.9倍
電力取引プラットフォーム事業の有力企業。DGPを基盤に電力PF、再エネPF、需給管理、系統用蓄電池運用を展開。東京大学とAIを共同開発、2024年12月に系統用蓄電池運用開始。日本中心に展開。

事業内容

デジタルグリッドは、発電事業者と電力需要家を直接つなぐ取引プラットフォーム「DGP」を中核に事業を展開しています。同社はDGP上で契約管理、需給管理、請求といった送電業務を一括して引き受け、専門知識や大きな初期投資がなくても自由に電力取引できる環境を提供しています。

主要な顧客は企業の需要家、再生可能エネルギーや化石燃料の発電家、旧来の電力会社や商社など多様です。同社の収益は取引量に応じたプラットフォーム手数料が中心で、市場変動リスクを直接負わずに手数料収入を得ています。また、需給管理や証書の代理調達など個別サービスの対価も売上に寄与しています。

事業は「電力PF事業」「再エネPF事業」「その他」の三つのセグメントに分かれます。電力PF事業は非再エネの調達を中心に、低廉な手数料、契約の柔軟性、コストの透明性を強みにしています。再エネPF事業ではRE Bridgeやエコのはし、GPAなどを通じて証書やPPAのマッチング・需給管理を行い、その他では系統用蓄電池の運用・アグリゲーションや脱炭素教育コンテンツなどを展開して将来の収益源を拡大しようとしています。

経営方針

同社はプラットフォーム「DGP」を中核に、需要家が自ら電源ポートフォリオを選べる市場を拡大することで、メガプラットフォーマーを目指しています。実績としては、2025年7月期の売上高は約61.5億円、営業利益は約27.4億円、営業利益率は44%と高い収益性を確保しています。取扱電力量は2025年時点で年間約24億kWh、月次平均解約率は約2.9%と安定しており、同社はこれらの基盤をもとに顧客数と取扱量のさらなる増加を狙っています。長期的には、PPA(電力購入契約)など長期取引を増やしてストック型の収益を高め、価格変動リスクを吸収できる顧客基盤の構築を目指しています。

重点投資分野はプラットフォーム機能の深化と営業チャネルの拡大です。同社はAIを活用して従来手作業だった契約管理や需給調整を自動化し、卸取引の「自動約定」や調達先の多様化でコスト競争力を高める方針です。また、代理店網を強化するために営業ツールの共通化、オンボーディングの標準化、代理店のスコアリング制度導入などを進め、効率的に新規契約を獲得します。現状では契約容量の7割超が市場調達100%ですが、同社はヘッジ商品や固定調達を拡充して継続率を引き上げる施策を具体化しています。

新市場開拓と事業拡大では再生可能エネルギー関連の取り組みを加速しています。非化石証書の代理調達サービス「エコのはし」からPPAのマッチング「RE Bridge」、そしてDGPでの需給管理へと顧客を段階的に誘導する仕組みを整備し、2025年7月時点で再エネの取扱容量は約281MW、取扱電力量は約2.5億kWhに達しています。加えて、旧一般電気事業者向けの再エネ卸取引や短期PPA、環境価値の固定化ニーズに応える案件発掘を進め、蓄電池を含む調整力事業での実績拡大にも注力しています。

技術革新については、発電・需要予測の精度向上を最優先課題と位置づけています。インバランス(計画値と実績の差)によるコストは事業リスクになるため、同社はAIによる予測モデルの改良、データ解析の高度化、アルゴリズム改良を継続投資してリスク低減を図ります。さらに、蓄電池メーカーとの連携強化やアグリゲーション実績の蓄積により系統調整力を高め、制度変更(同時市場など)にも迅速に対応できるサービス開発体制を整備していく方針です。