Freshworks Inc.FRSH

時価総額
$38.7億
PER
顧客体験(CX)と従業員体験(EX)向けSaaSの大手。生成AI「Freddy」搭載のカスタマーサポート・ITSM製品を展開、72,000社超の導入。2024年6月にIT資産管理系企業を約2.38億ドルで買収。世界約170カ国で展開。

事業内容

Freshworks Inc.は企業向けに顧客体験(CX)と従業員体験(EX)を改善するクラウド型ソフトを提供しています。使いやすさを重視したサブスクリプション型の製品群が主力で、無料プランや14日間のトライアルを通じてユーザー主導での導入を促すプロダクト主導の成長戦略(PLG)を軸にしています。

同社の顧客は小規模から大企業まで幅広く、事業の多くは継続的な定期収益(サブスクリプション)で構成されています。価格は透明で分かりやすく、主にインバウンドでの獲得を基本としつつ、中堅・大企業向けにはアウトバウンド営業やパートナー経由での拡大を図り、カスタマーサクセスが更新や追加導入を担当して収益を伸ばしています。

同社は製品を大きくCX系とEX系に分けて展開しており、CX側にはFreshdeskやFreshchat、営業・マーケティング領域の製品、EX側にはITサービス管理のFreshserviceやDevice42などをそろえています。生成系AIのFreddy(Freddy AI Agent、Freddy AI Copilot)を組み込み自動応答や業務支援を強化し、米国とインドの研究開発拠点で機能改善とスケール化を進めています。

経営方針

同社は売上拡大と顧客基盤の深化を両輪に成長を目指しています。直近の連結売上高は2024年で7.204億ドル、前年同期比で約21%増と高い伸びを示している一方、2024年の純損失は9,540万ドル、累積欠損は37億ドルに達しており、「近い将来の黒字化は期待していない」と明言しています。したがって同社は収益成長を優先しつつ、既存顧客の拡大(ネット・ダラー・リテンション率は2024年で103%)やハイバリュー顧客(ARRが5万ドル超の顧客は3,053社で前年から22%増、総ARRの約50%を占める)といった指標を高めることで長期的な収益性確保を目指しています。同時に、資本政策として2024年11月に上限4億ドルの自己株買いを承認しており、成長投資と株主還元のバランスを図ろうとしています。

同社は製品・販売・パートナーの三点に重点投資を行い、使いやすさと手頃な価格で差別化を図っています。プロダクト主導型の販売モデルを核に14日間の無料トライアルや透明な料金設定でユーザー獲得のハードルを下げ、そこに受注強化のためのアウトバウンド営業やパートナー拡充を重ねる戦略です。研究開発や製品差別化にも注力しており、FreshdeskやFreshserviceなど2製品がそれぞれ1億ドル超のARRを持つなど製品群の拡大を進めています。具体的施策としては営業・マーケティング組織の拡張、製品開発チームの増員、技術・販売チャネルの戦略的提携、そして買収や戦略的投資を通じた機能拡充を挙げています。

新市場開拓・事業拡大ではグローバル展開と買収を両輪にしています。現在約170カ国で事業を展開し、地域別売上構成は北米46%、EMEA38%、その他16%と地域多様性がありますが、同社はさらに多言語対応や現地パートナー、現地営業・カスタマーサービス人員の採用を進めて市場浸透を狙っています。戦略的買収の一例として2024年6月にIT資産管理のDevice42(D42)を総額約2.381億ドルで取得し、IT資産管理領域やソフトウェアライセンス販売を取り込みました。加えて、複数製品購入顧客の比率は現状36%でこれら顧客がARRの46%を占めていることから、クロスセルによる売上増加を具体目標に据えています。

技術革新ではネオ(Neo)プラットフォームと生成系AIの投入を成長のエンジンと位置づけています。Freddy AI AgentやFreddy AI Copilotといった生成AI機能で顧客・従業員の問い合わせ対応を自動化・効率化し、約7.2万社のユーザー基盤に付加価値を提供しています。開発拠点を米国とインドに置き、2024年には内部使用ソフトウェアの資本化に約684万ドルを計上するなど継続的な開発投資を行っています。こうした技術投資は差別化につながる一方で、生成AIの精度や法規制対応、信頼性確保といった実装・運用面の課題も踏まえ、段階的に機能拡張と品質管理を進める方針です。