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BRIGHTCOVE INCBCOV
事業内容
BRIGHTCOVE INCはクラウド型の動画配信技術と関連サービスを提供する企業です。同社は企業やメディア向けに動画の保存・配信・再生・計測を一括して扱うプラットフォーム(代表例はVideo Cloud)や、オープンソースの動画プレーヤーVideo.jsの開発支援を行っています。
同社の収益は主にサブスクリプション型のSaaSモデルに基づき、顧客は月額または年額で製品にアクセスするための料金を支払います。顧客は放送局やデジタル出版社、スポーツ・エンタメ、ブランド、リテール、政府や教育機関など多岐にわたり、グローバルで多数の企業にサービスを提供しています。
事業はコアのVideo Cloudを軸に、動画のエンコードや変換を担うZencoder、マーケティング向けのMarketing Studio、視聴行動や広告効果を分析するエンゲージメント系のインサイト機能、FASTチャンネル管理や再生品質の可視化といった付加価値サービスで構成されています。これらを組み合わせることで、顧客はコンテンツの収益化や視聴者拡大、社内外のエンゲージメント向上といった具体的な成果を目指せるようになっています。
経営方針
同社は「世界で最も信頼されるストリーミング技術企業」を目指しています。具体的には、サブスクリプション型のクラウドサービス(SaaS:定期課金のクラウド配信プラットフォーム)を軸に、Video Cloudを中心とした顧客基盤を深掘りすることで収益性の改善を図っています。直近の業績では売上高が2022年の2億1,100万ドルから2023年は2億120万ドルに減少しましたが、同時に世界60か国以上で2,559社の顧客を抱えており、上位顧客向けのリソース強化によって成長回復とマージン改善を目指しています。経営効率化の一環として、2023年4月に約10%の人員削減を含む再編を実行し、2023年の再編費用として約240万ドルを計上、2024年1月にも追加の再編で170〜180万ドルを見込むなど、費用構造の最適化を進めています。
同社は研究開発と製品差別化に重点投資しています。差別化施策として、視聴者行動を解析する「Engagement Insights」、広告の最適化を図る「Ad Insights」、視聴体験の品質を把握する「QoE Insights」、FASTチャネルの運用支援やクラウドプラウト(Cloud Playout)などメディア特化機能を提供しており、マーケティング領域にはBrightcove Marketing Studioで既存のマーケティングツールとの連携を進めています。加えて、同社はVideo.jsというオープンソースのビデオプレーヤーコミュニティを企業として後押ししており、開発者エコシステムやプロフェッショナルサービス、チャネルパートナー網を通じて差別化を図っています。知的財産の保護にも注力しており、米国で60件、海外で56件の特許を保有・取得中です。
新市場開拓と事業拡大は、買収とパートナー戦略を併用して進めています。例として2022年2月のWicket Labs買収は総額約1,703万ドルの対価配分が公表され、うち開発済技術の識別可能無形資産が約420万ドル、のれんが約1,395万ドルでした。営業体制はアメリカ、欧州、アジア太平洋、日本に直販組織を置き、インドや中東はチャネル経由で拡大するモデルを採用しており、特にメディア企業向けの収益化機能(SVOD/TVOD/AVODやFAST)とエンタープライズ向けの業務統合を拡大ターゲットとしています。また、グローバル配信の拡張はAWSなどのクラウド基盤やAkamai・Fastly・CloudFrontといったコンテンツ配信網(CDN)との協業でスケールさせる計画です。
技術革新への取り組みは、AIとエンコーディング効率化を中心に進められています。視聴データをAIで学習して視聴者セグメントや広告反応を導く分析機能の投入や、Zencoder内のContext Aware Encoding(状況に応じた符号化)による保存・配信コストの低減など、実運用でのコスト削減と体験向上を同時に狙う施策を展開しています。社内のソフトウェア開発投資も大きく、内部利用ソフト開発費の償却額は2023年に約990万ドルと公表されており、今後も人材採用・育成やインフラ強化を通じて技術ロードマップを実行する必要がある点に留意が必要です。