ZIFF DAVIS, INC.ZD

Ziff Davis, Inc.は、特定の分野に絞ったデジタルメディアとインターネットサービスを展開する企業です。同社はテクノロジーやショッピング、ゲーム・エンタメ、ヘルス＆ウェルネス向けの編集コンテンツやコミュニティ、さらにクラウド型のサイバーセキュリティやマーケティングツール、ネットワーク性能を測る分析サービスを主力で提供しています。

同社の主要な顧客はコンシューマー、広告主、EC事業者、通信事業者や企業のIT部門、規制機関など多岐にわたります。収益は広告やコマース連携、会員・サブスクリプション、SaaSの利用料、データ・解析やコンサルティングなどのサービス課金で構成され、デジタルメディアは季節性（第4四半期の小売活動で収益が高まる）を伴います。

事業は大きくデジタルメディア、コネクティビティ、サイバーセキュリティ＆マーケティングテクノロジーの三つに分かれます。デジタルメディアでは妊娠・育児向けのBabyCenterやWhat to Expect、テック系のメディアなどを運営し、コネクティビティではOoklaのSpeedtestやEkahau、Downdetector、RootMetricsでネットワーク性能データと分析を提供します。同社のサイバーセキュリティ＆マーケティング部門はVIPREやIPVanish、Livedrive、MOZグループ（メール／SEOツールやクラウド通話サービスなど）を通じて消費者および中小〜企業向けのクラウドサービスを展開しています。

同社は有機成長と買収による拡大を組み合わせ、持続的なフリーキャッシュフローの創出と収益性向上を目指しています。具体的には2012年から2024年までに約33億ドルを投じて90件超の買収を実行しており、資本配分は買収、自己株式買い戻し、財務基盤強化の三本柱で行われています。株主還元の一環としては発表済みの買戻枠を2029年まで延長し、合計で最大1500万株が認められており、2024年には350万株を取得、2024年末時点で累計8,758,692株、費用合計約5.836億ドルが買戻に充てられました。事業面では自社サイト・アプリ上の広告収入は外部配信に比べて高い営業利益率を生んでおり、同社は自社資産へのトラフィック誘導と定額収入化でマージン改善を図っています（連続的に営業利益率と純利益率が改善し、2024年の継続事業からの純利益率は約4%に達しました）。

同社は投資の重点をデジタルメディア、接続性（Connectivity）、およびサイバーセキュリティとマーケティング技術に置いています。デジタルメディアではTech、ショッピング、ゲーム、ヘルス領域の信頼ある編集ブランドを基盤に広告とサブスクリプションの両面で収益化を進め、ヘルス領域は31のグローバルサイトと複数言語で展開しています。接続性ではOoklaのSpeedtestが強力な資産で、これまでに500億回以上のテストが実行され、日次で約1,100万件の測定が行われている点を差別化要因としています。サイバーセキュリティとマーケティング技術はクラウド型の定額サービスとしてVIPREやMOZなどのブランドでエンドポイント保護や検索最適化ツールを提供し、これらの独自製品群と編集ブランドの組合せで広告効果や課金ビジネスを高める戦略です。

同社は新市場の開拓と事業拡大を買収と製品横展開で進めています。2024年にはデジタルギフティングと決済機能を持つTDSを買収し、同年にはCNETを取得してテック系のオーディエンスとコマース機能を強化しました。買収候補は「プラットフォーム買収」と「既存事業への組み込み（タックイン）」の二軸で評価し、取引ごとに期待される内部収益率を主要評価指標として採用しています。さらにOoklaやEkahau製品を通じて通信事業者や企業向けのネットワーク設計・性能改善市場へ深く入り込み、サイバーセキュリティやマーケティング製品は中小企業から大企業までの顧客基盤拡大を狙っています。

同社は技術革新を事業成長の中核と位置づけ、データ収集・解析とクラウド型サービスの強化に投資しています。接続性領域ではSpeedtestで得られる大量の利用データを基にネットワーク性能や利用者体験を可視化し、Ekahauのハード・ソフトでWi‑Fiやプライベート5Gの設計・最適化を提供します。サイバーセキュリティ面では国際的な情報セキュリティ基準（ISOやNISTに基づく運用）を採用し、最高技術責任者や最高情報セキュリティ責任者が長年の経験をもってリスク管理と製品改良を牽引しています。広告の関連性向上やコンテンツの効果測定、サブスクリプション転換のための技術投資も継続して行っており、同社はデータと技術で差別化した収益拡大を目指しています。