- 米国企業
- Essential Utilities, Inc.
Essential Utilities, Inc.WTRG
事業内容
Essential Utilities, Inc.は米国で水道・下水道および家庭や事業所向けの天然ガスの供給を行う公益事業会社です。同社は水の浄化・配水、下水の収集・処理、天然ガスの配給を主力サービスとして日常のライフラインを安定的に届けています。
同社の主要顧客は住宅と小規模商業施設が中心で、製造業などの大口顧客や自治体との契約も保有しています。収益構造は各州の規制料金に基づく安定した利用料収入が主体で、顧客数の増加や設備投資を通じたレートベースの拡大で長期的なキャッシュフローを確保しています。
事業は大きく水道、下水道、天然ガスの三つのセグメントに分かれており、各地域の子会社が運営を担っています。日々は老朽設備の更新や環境・安全規制への対応、顧客サービスやメーター管理などの運営に注力すると同時に、近隣の水道・下水道システムの買収を通じた成長戦略を進めています。
経営方針
同社は長期的な「レートベース(設備投資)成長」を軸に事業を拡大することを目指しています。具体的には、買収と既存事業での有機成長により年間で顧客数を2〜3%増やす計画を掲げ、2024年は水・下水の買収を2件完了して9,391件の新規顧客を取得しました。さらに、2024年末時点で約213,000の等価小売顧客を想定する7件の買収契約(うちDELCORAは約276,000ドルの買収価格で約198,000等価住戸を対象)や、潜在案件として約40万顧客分のパイプラインを抱えており、資金調達や規制承認を踏まえて段階的に取り組んでいます。
重点投資分野としては老朽インフラの更新、汚染対策、排出削減など環境・信頼性向上のための設備投資を優先しています。同社は、買収候補を既存事業と近接する地域に絞り「臨界質量(一定規模)」を作ることで運営コストを顧客数で分散し、規模の経済を実現する差別化を図っています。逆に成長性や収益性が低いシステムは売却して資金を再配分する方針を明示しており、これにより資本効率と株主価値の向上を目指しています。
新市場開拓や事業拡大は、規制当局の承認プロセスをにらみつつ慎重に進められています。同社は新たな州や自治体の水・下水事業の買収も検討しており、実行に当たっては取得価格が規制上のレートベース算定に与える影響を精査します。買収後の統合は案件の複雑さによって数年を要することがあり、取引ごとに経営資源を投入して運用体制の統合や規制対応を進める計画です。
技術革新への取り組みでは、サイバーセキュリティと運営のデジタル化を両輪にしています。同社は米国標準(NIST)に沿った体制で暗号化やデータマスキング、データ漏洩対策、認証・アクセス管理、マルウェア対策、私設ネットワーク経由のデータ送信などを導入し、定期的に外部レビューやフィッシング訓練を実施しています。顧客サービスや課金、資産管理、施工・保守の計画管理といった業務をITで支援することで運転効率と安全性を高め、将来の買収先統合や運用の標準化にも備えています。