WEST PHARMACEUTICAL SERVICES INCWST

時価総額
$185.2億
PER
注射薬向け統合容器・投与システムの世界最大手。プレフィルドシリンジ、自動注射器、分析ラボサービスを展開。2023年2月に自社株買い上限10億ドルを承認。米国・欧州・アジアに製造拠点、2024年の海外売上比率57.5%。

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企業概況
106文字)
業績概況
テーマ
ブランド
2項目)
ライバル企業
同業種の日本企業
2社)

事業内容

WEST PHARMACEUTICAL SERVICES INCは、注射薬や医療製品向けの容器や投与システムを設計・製造する企業です。主力は止栓やシールなどの一次包装部材や自己注射器、注射用カートリッジといった薬剤投与デバイスに加え、分析ラボや滅菌などの付帯サービスを組み合わせた総合的なソリューションを提供しています。

同社の顧客は世界の大手バイオ、ジェネリック、製薬、診断・医療機器メーカーが中心で、製薬企業の注射製剤に同社の部品や装置が組み込まれて市場に出ます。販売は主に自社の営業・流通網を通じて行い、上位顧客の比率が高く、上位10社で約43%の売上を占めるなど顧客集中の傾向があります。

事業は大きく「プロプライエタリ製品」と「契約製造」の二本柱で構成されています。プロプライエタリ製品では一次包装材や高機能ポリマー製容器、自己注射器、分析や規制支援を含む統合サービスを提供し、世界各地に生産拠点を持っています。契約製造では顧客仕様の部品設計から金型作成、自動組立までを手掛け、大手製薬や医療機器メーカー向けに量産供給を行っています。

経営方針

同社は中長期的に売上成長と収益性の改善を目指しています。2024年の連結売上高は約29億ドル($2,893.2 million)で、うちプロプライエタリ製品が約23.3億ドル($2,334.5 million)、受託製造が約5.6億ドル($558.7 million)を占めています。経営はキャッシュ創出と株主還元を重視しており、2023年2月に承認された総額10億ドルの自社株買い枠を活用して2024年に1,583,032株、約5.609億ドルを買い戻しました。配当も継続しており、四半期ごとの配当額は2024年に$0.20(上期)および第4四半期に$0.21とされています。

同社は重点投資分野として、一次包装部材や薬剤の封じ込め・送達(コンテインメント&デリバリー)を挙げ、差別化を図っています。具体的にはゴム栓やシリンジ部品に加え、ガラス代替素材の「Crystal Zenith」などの高付加価値材料、自己注射器やリユーザブルな投与システムを開発しており、これらと分析ラボや規制対応支援を組み合わせた「設計→試験→生産→アフターサポート」の一貫提供で顧客に訴求しています。2024年の研究開発費は約6,910万ドルで、製品開発と品質管理、グローバルな生産能力維持に資金を振り向けています。

新市場開拓と事業拡大は、国際展開と受託製造の強化を軸に進められています。同社の売上の約57.5%は米国外で発生しており、北米・欧州・アジアにまたがる製造拠点を持つ点を生かして顧客のグローバル供給に対応しています。供給面では主要原材料(エラストマー、アルミ、プラスチック)や単一供給者に依存する領域があるため、複数拠点や契約での在庫保有、主要サプライヤーとの長期契約(例:ExxonMobilとの原料供給協定)でリスクヘッジを図っています。加えて、2022年の構造改革で年間約1,700万ドルのコスト削減を見込み、事業の効率化を進めています。

技術革新への取り組みは製品とプロセスの両面で明確です。同社は新素材や自己注射器、接続型ヘルスのような患者中心の技術に投資すると同時に、分析ラボや前承認段階の包装支援などの付加価値サービスを拡充しています。知的財産(特許・ノウハウ)を重視しつつ、製造設備への投資で生産性向上を図り、サイバーリスク対策としてCOSOのリスク管理枠組みとNISTのサイバーセキュリティフレームワークを採用してシステム保護と事業継続性を確保しています。これらにより、同社は高品質な注射製剤向けソリューションの総合提供者として、差別化と成長を両立しようとしています。