W. P. Carey Inc.WPC

時価総額
$145.1億
PER
単独テナント向け長期ネットリース型商業用不動産投資・運用の大手。セール・リースバック取引とインフレ連動型賃料を展開。2022年8月のCPA:18合併で約22億ドルの不動産資産取得。ニューヨーク本社、ダラス・ロンドン・アムステルダム拠点、米欧中心に展開。

事業内容

W. P. Carey Inc. は、主にネット・リース型の商業用不動産に投資する上場リートで、企業が保有する重要な不動産を取得して長期で賃貸するサール・リースバック取引を多く手掛けています。同社はトリプルネットと呼ばれる長期賃貸(賃借人が税金・保険・維持費を負担する形態)を通じて、安定した賃料収入の獲得を目指しています。

同社の顧客は信用力のある単独テナントの企業が中心で、小売、消費者サービス、食品・飲料、自動車、食料品、医療・製薬、物流など多様な業種に及びます。収益の主軸は契約に基づく定期的な賃料で、物件によりインフレ連動や固定の賃料上昇条項を組み込んでおり、小売やホテルでは売上連動の歩合賃料や、資産管理・事務手数料なども一部収入源になります。

同社は物件種別、テナント、業界、地域で広く分散したポートフォリオを構築し、賃料増額スケジュールやリース満了時期の分散を通じてリスク管理を行っています。投資の面では取得・改修・フォローオン取引を活用して既存の関係から拡張し、運営面ではポートフォリオの信用リスクや契約更新を積極的に管理しており、近年は投資運用事業は事業全体に対して相対的に小さいと位置付けています。

経営方針

同社は安定した現金収入を確保して配当を成長させ、長期的に株主価値を高めることを成長の中核目標としています。具体的には、長期のネットリース(借主が税金・保険・維持費など実務負担を負う契約)を中心に運用し、契約最低年間賃料(ABR)は約13.37億ドル、保有リースは899件に上るなど、収益の安定化を図っています。資本調達面では最大10億ドルの「アット・ザ・マーケット」プログラムを通じた株式発行枠を確保し、時機に応じた株式発行で成長資金を補完できる体制を整えています(時価総額の目安は約120億ドル)。

投資の重点分野は企業の事業にとって不可欠な物件の取得とサイリースバック(企業が保有する重要不動産を買い取り再度長期で貸す取引)で、差別化の源泉は借主の信用力評価と物件の「重要度」にあります。賃料は契約により事前に設定された増額や消費者物価指数(CPI)連動の調整が織り込まれているケースが多く、これにより収入の予見性を高めています。また、小売、食品、医療など業種や地域を広く分散しており、ポートフォリオの43.4%が2038年以降に満了する長期契約である点も資産の安定性に寄与しています。

事業拡大は国内外での買収と既存資産の拡張・フォローオン取引を通じて進めています。直近ではCPA:18との合併で約22億ドル相当の資産を取り込み、セルフストレージ等の営業資産も加わりました。また、投資先を切り出したスピンオフ(NLOP)を実施し、同事業に対する外部運用契約を結ぶことで運用収入と年間約400万ドル程度の管理手当を想定するなど、資本の効率化と収益源の多様化を図っています。スピンオフに伴うNLOPの借入枠は4.55億ドルで、同社はその一部として約3.439億ドルを手元に残すなど流動性確保にも配慮しています。

技術面ではサイバーセキュリティと情報開示の強化に注力しており、外部の管理型サイバー事業者や法律・保険の専門家と連携したインシデント対応体制を整えています。検知・封じ込め・復旧の手順を定めたインシデントレスポンス計画を運用し、従業員向けのサイバー研修や経営陣への報告ルートも整備しているため、2024年12月31日時点で過去3年にわたり重要なサイバー事故は確認されていません。加えて、金利や為替の変動に対してはデリバティブを用いたヘッジでリスク管理を行い、開示統制や財務報告の内制強化にも投資しています。