WOLFSPEED, INC.WOLF

時価総額
$26.7億
PER
シリコンカーバイド材料・パワー半導体の最大手。SiCウエハやSiC/GaNエピ製品、SiCパワーデバイスを自社製造ラインで量産供給を展開。23年12月にRF事業をMACOMへ売却。米国・欧州・日本・中国で展開。

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企業概況
121文字)
業績概況
テーマ
2項目)
ブランド
ライバル企業
2社)
同業種の日本企業
4社)

事業内容

Wolfspeed, Inc.は、シリコンカーバイド(SiC)や窒化ガリウム(GaN)といった高性能半導体材料を核に、電力変換向けの素子や部品を製造・販売している企業です。主力製品はSiCウェハーやエピタキシャル材料、それらを用いたパワーデバイスやパワーモジュールで、高効率の電源や電気自動車向け用途を中心に展開しています。

同社の主要顧客は自動車メーカーや電源メーカー、産業機器メーカー、ほかの半導体メーカーや流通パートナーなどで、製品販売や長期供給契約を通じて収益を上げています。売上は大口顧客の採用状況や市場での最終製品需要に左右されやすく、顧客の製品設計や販売動向が業績に直結します。

事業は大きく材料セグメントとデバイスセグメントに分かれており、材料側ではSiCウェハーとエピ製品、デバイス側ではSiCディスクリート素子やモジュールを扱っています。加えて同社は他社向けの製造サービスや研究開発にも注力し、生産能力拡大や新製品投入を通じて電気自動車や再生可能エネルギーなどの成長分野でシェア拡大を目指しています。

経営方針

同社は売上高の拡大と生産スケールの拡大を成長の中核に据えています。2024年度の売上高は807.2百万ドルで前年から48.7百万ドル増加しましたが、工場立ち上げに伴う稼働不足コスト124.4百万ドルなどの影響で粗利益率は32.0%から9.6%に低下し、営業損失は445.3百万ドルに達しています。同社はこれらの短期的な損益変動を容認してでも、長期的に需要を取り込むために莫大な設備投資を行っており、2024年度の有形固定資産購入は2,095.5百万ドルにのぼっています。設計段階での採用見込み(design‑ins)が91億ドル($9.1B)、実際の採用決定(design‑wins)が58億ドル($5.8B)と大きく伸びている点から、同社は収益の拡大を着実に目指しています。

同社は炭化ケイ素(シリコンカーバイド)材料からパワー用素子・モジュールまでを一貫して強化することに重点投資をしています。具体的にはニューヨークの200mm対応の自動化ファブの立ち上げや、ノースカロライナ州ダーラムの材料工場拡張、シラーシティでの新工場建設、テキサス州のエピ施設改修、さらにドイツ・ザールラントでの200mmデバイス製造施設計画といった拡張計画を進めています。これらは大口需要に対応し単位当たりコストを下げるための施策であり、知的財産の保護にも注力しており、米国で552件、外国で約1,048件の特許を保有することで差別化を図っています。

同社は自動車(特に電気自動車)やエネルギー向けの新市場開拓を積極的に進めています。欧州の自動車市場に近接するザールラントでの投資はその一環であり、設計採用を拡大することで需要の具体化を狙っています。成長資金の確保や助成金の活用も重要な施策で、米国のCHIPS法に基づく資本補助や税額控除の受給交渉、インフレ抑制法に基づく税額控除の検討を行っており、外部からの設備予約金(容量予約預託金)としては合計60百万ドルを見込むなど資金調達とコスト最適化を並行させています。一方で供給側との最低購入契約や買い取り義務(例:ある契約で累計86.4百万ドルのコミットメント、別途年度ごとの最低発注額の設定など)も抱えており、サプライチェーン管理や委託生産の運用が事業拡大の鍵になります。

同社は技術革新を通じて製品性能と歩留まりの改善、コスト低減を図ることで競争力を高める方針です。研究開発や製造プロセスの高度化に資本を投じると同時に、社内の情報システム強化(全社ERP導入等)や人材確保により運用能力を高めようとしています。短期的には新工場の稼働開始による費用負担で粗利が圧迫されていますが、同社は自動化・大型ウエハー化(200mm対応)や材料開発を通じて長期的なマージン回復を目指しています。知的財産の保護と顧客設計採用の獲得を両輪に、技術リードを維持することを同社は目指しています。