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ADVANCED DRAINAGE SYSTEMS, INC.WMS
事業内容
Advanced Drainage Systems, Inc.はプラスチック製の排水・水管理製品を製造・販売しています。同社の主力製品は雨水や下水向けのパイプ、地下に設置する浸透チャンバー、家庭や商業用のプラスチック製タンクや浄化槽です。
同社は約1万6,000の顧客基盤を抱え、売上の大半をディストリビューター経由で獲得しています。大口顧客としてFergusonとCore & Mainがあり、それぞれ2025会計年度の純売上高の約14.3%と12.7%を占めます。
同社は事業をパイプ製品、関連商品(継手やフィルターなど)、および浄化・貯留システムといったセグメントで展開しています。住宅向けからインフラや商業施設向けまで幅広い製品ラインをそろえ、設計段階での技術支援や国内の在庫・物流網を活かしてディストリビューターや自治体向けに供給しています。
経営方針
Advanced Drainage Systems(ADS)は、安定的な売上成長と株主還元の両立を指向しています。具体的には、2022年に取締役会が承認した10億ドルの自社株買い枠を重要な資本配分手段として位置づけており、2025会計年度には40万株(約6,990万ドル)を償却しました。時価総額ベースでは、2024年9月30日時点で非関係者保有の株式の市場価値が約120.34億ドルに達しており(2025年5月8日時点の発行済株式数は約7,758万株)、同社は財務的に株主価値の向上を目指しています。一方で長期負債のロールオーバーや設備投資に伴う資金需要も大きく、2025年3月31日時点の長期債務の元本償還予定合計は約12.7億ドルと、資本政策は流動性管理とバランスを取りながら進められています。
同社はパイプ製品(HDPE/PP)を中核に、付随する「Allied Products」を組み合わせてワンストップの水管理ソリューションを提供することで差別化を図っています。具体的施策としては、全国規模の製造・在庫ネットワークと約1,100台の専用トレーラーを活用し、地元ディストリビューターや大手流通(例:Fergusonが売上の14.3%、Core & Mainが12.7%を占める)への安定供給を重視しています。製品面ではN-12やSaniTite HPなどの規格承認を通じて市場採用を促進し、軽量・耐久性・施工性を訴求してコンクリート等からの置換を進め、Allied製品群は樹脂価格変動の影響が相対的に小さい点を活かして収益安定化を図っています。
事業拡大は有望な分野のM&Aと既存チャネルの深耕で進められています。最近の大きな投資事例として、2024年10月にInfiltrator子会社が取得したOrencoの買収対価は約2.373億ドル(買収価格約2.56億ドルから現金取得分を控除)で、これにより分散型廃水処理や高付加価値のタンク製品、商業向け処理プラント分野に本格参入しました。加えて2022年のCultec買収(約4,800万ドル)などで製品ポートフォリオを拡大し、住宅・非住宅・農業・インフラの各市場で交差販売を強化することで有機成長と買収統合によるシナジー創出を目指しています。
技術革新では特許や開発技術への投資を通じて差別化を継続しています。製品イノベーションの例として、IM-Seriesの注入成形タンクやAeroFinのコンパクト処理システム、Orencoの制御パネルや複合材製品などがあり、買収時の資産評価でも開発技術や顧客関係の無形資産が数千万~1億ドル規模で認識されています(Orencoの無形資産は概算で1.48億ドル)。同社は営業・技術対応チームを設計段階から案件に関与させることで規格採用を促進し、さらに製造面では設備投資(2025年時点の有形固定資産純額は約10.5億ドル、減価償却費は約1.29億ドル)を継続して生産効率と供給力を高めることを目指しています。社会面では「Our Reason is Water」に基づくリサイクル樹脂利用促進などの10年目標も掲げ、製品と製造の両面で持続可能性を高める取り組みを進めています。