Eco Wave Power Global AB (publ)WAVE

時価総額
PER
海洋波力発電の新興企業。近海・陸域向けの独自WEC技術とグローバル特許ポートフォリオを展開。2021年7月のNasdaq上場と2024年12月の291,000ADS公募で300万ドル調達。イスラエル・欧州・米国でのプロジェクト展開。

事業内容

Eco Wave Power Global AB (publ)は、海や湾の波の上下動を利用してクリーンな電気をつくる波力発電技術を開発・実装しています。主力は沿岸や陸寄りに設置する波力変換システムで、デモプラントの運用や商業化に向けた実装を進めています。

同社の顧客は電力会社や地方自治体、港湾・島嶼(とうしょ)地域、産業・防衛分野などの法人や政府関係者が中心で、B2BおよびB2Gのプロジェクト契約で収益を得ています。収益モデルは自社で建設・保有・運営する方式、建設後に移管する方式、共同事業や一括請負など多様で、採用には顧客や関係者への説明に時間を要するため販売サイクルが長くなることがあります。

事業は企画・許認可・設計から調達、製造、海上設置、系統接続、運用保守、最終撤去まで一貫して関与するか、または現地の協力会社と連携して進めています。システムは浮体の機械部分、駆動・変換の機構、発電・電気系統、制御ソフトという要素で構成し、主要部品は経験あるメーカーから調達しつつ、統合や運用ノウハウは社内で保持し、特許や営業秘密で知的財産を保護する取り組みを行っています。

経営方針

同社は波力発電を商業化して業界リーダーになることを成長目標としています。直近の損益では2024年の純損失が約2.11百万ドル、営業活動によるキャッシュ流出は同年で約1.82百万ドルでしたが、期末現金は約7.85百万ドルを確保しており、直近の消耗ペースで見れば数年分の開発・営業活動を賄える資金基盤を有しています。2024年には米国でのADS公募や12月の直接公募で総額約3.0百万ドルの資金調達を実施しており、これらの資金でパイロット展開と商業化の加速を図る計画です。

同社が重点投資する分野は研究開発、現地実証と電力系統接続、知的財産の保護、そして販売・事業開発です。技術面では、陸岸や沿岸に設置する「オンショア/ニアショア型」の波力変換機を中心に、浮き体の機構や油圧・電気・制御という複数のサブシステムを統合することに注力しており、主要部品はSiemensやBOSCH Rexroth、ABBなど実績あるメーカーの部品を採用して調達リスクを低減しています。同社は特許出願や営業秘密による権利保護に多くのリソースを投じる一方で、2024年分の研究開発費は資産計上せず費用化しており、短期的には研究投資を損益計算書に反映させながら技術強化を進めています。

新市場開拓および事業拡大では、港湾、島嶼、マイクログリッド、沿岸都市、公共セクター(州や港湾当局)を主要ターゲットに据え、B2BおよびB2Gを軸とした直接営業で大型案件の獲得を目指しています。同社はヤッファ港やロサンゼルス港でのデモ実績やジブラルタル、EDFプロジェクトでの協業経験を持ち、国際会議や政府向けのデモツアー、現地でのフィージビリティ調査提供を通じて導入決定を後押しする方針です。ただし同社自身も認める通り公共セクター中心の販売は意思決定に時間を要するため、顧客教育や長期的な商談管理に資源を配分する計画です。

技術革新への取り組みとしては、発電実績のリアルタイム検証を可能にするWave Power Verification(WPV)ソフトウェアや自社開発の制御・自動化ソフトにより運転効率と保守の効率化を図っています。さらにSiemens等との協業で電気系統やインバータなどの効率改善を進めるなど、外部の専門技術と自社コア技術を組み合わせてコスト削減と信頼性向上を目指しています。浮き体は各設置地で現地生産する方針で重要なノウハウを社内に保持しつつ、標準部品の活用で納期と保守性を確保する点も差別化要素です。