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VORNADO REALTY TRUSTVNO
事業内容
VORNADO REALTY TRUSTは米国を中心に大規模なオフィスや街路型の小売、商業用不動産を保有・運営する不動産投資信託(REIT)です。同社は特にニューヨークのマンハッタンにおける高付加価値オフィスビルや旗艦店向けの小売スペースの賃貸と再開発を主軸に事業を展開しています。
同社の収益は主にテナントからの賃料と共益費、賃貸契約に基づく増額分に由来し、管理手数料や共同事業からの持分損益も重要な収入源です。入居テナントはテクノロジー、金融、広告、教育、エンタメなど多様で、単一テナントが総収益の10%を超えることはありません。
同社は報告上「New York」と「Other」の二つのセグメントで運営しており、New Yorkセグメントは約2,640万平方フィートの物件群で、そのうち約2,010万平方フィートがマンハッタンのオフィス、約240万平方フィートが街路小売です。さらに51.5%出資のフェフス・アベニュー/タイムズスクエアのジョイントベンチャーやAlexander’sへの持分投資、そして建物の清掃・警備・駐車などを担う子会社を通じて資産運用と施設サービスを組み合わせ、賃料収入と資産価値の向上を図っています。
経営方針
同社は「株主価値の最大化」を明確な経営目標としています。業績指標としてトータルリターンを重視しており、直近の2024年の1年リターンは51.3%と報告されています(FTSE Officeは21.5%、MSCIは8.8%)。ポートフォリオは主にニューヨーク市に集中しており、同社のニューイングランド区分では合計約2,640万平方フィート、うちマンハッタンのオフィスが約2,010万平方フィートを占めています。成長資金は自己資金、資産売却、パブリックおよびプライベートの資本市場から調達する方針で、純粋な資産収益力を示す指標として「NOI(純営業収益)at share」を主要な意思決定基準に用いています。
同社は差別化の手段として、ニューヨーク市における優良物件の取得・再開発に注力しています。具体的には「再取得コストより割安での取得」や「再開発による賃料底上げ」を狙いとし、運営面では自社グループのBMS(ビル清掃・警備・設備運営)を通じた一貫管理でサービス品質とコスト管理を図っています。また、複数の共同事業体に出資することでリスク共有と規模メリットを追求しており、代表例として「Fifth Avenue and Times Square JV」では51.5%の出資持分と総額約18.28億ドルの優先株式を保有、同JVの収入に対して年率2%の管理報酬を受け取る仕組みを敷いています。こうした構造は単なる不動産保有にとどまらない収益源の多様化に寄与しています。
新規市場開拓や事業拡大については、既存の保有資産の再開発や未利用の開発用地の活用を継続する方針です。同社は必要に応じて資産の売却・取得を機動的に行い、ポートフォリオの最適化を追求しますが、取得資金の調達や金利上昇、買収先の統合といった実務リスクも明確に認識しています。株主還元の一環としては、2023年に最大2億ドルの自社株買い枠を設定しており(2024年末時点で約1.70857億ドルが残存)、外部資本と内部余力を組み合わせた柔軟な資本政策を採っています。
技術革新とESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みも戦略の重要な柱です。同社は「Vision 2030」ロードマップの下で再生可能エネルギー証書の活用や省エネ設備導入、建物ごとのカーボン会計ソフトやエネルギー監査、ビル自動化ソフトを活用してエネルギーと水の削減を進めています。さらにサイバーセキュリティは全社的なリスク管理に組み込まれており、重大インシデントに備えた対応計画と監査プロセスを整備しています。これらはテナントの利用効率や健康・安全性の向上、将来的な運営コスト低減と資産価値維持に直結する施策です。