- 米国企業
- Vital Farms, Inc.
Vital Farms, Inc.VITL
事業内容
Vital Farms, Inc.は、放牧で飼育した高付加価値の卵とバターを主力に、倫理的で持続可能な食の選択肢を消費者に届ける食品メーカーです。 同社は家族農場のネットワークを通じて原料を確保し、プレミアム品質の商品を小売や外食向けに販売しています。
主な顧客は自然食品系や一般大手の小売、流通業者、そして外食事業者で、製品の販売が収益の中心です。 直近の会計年度では卵と卵関連製品が約96%の売上を占めており、殻卵はプレミアム価格で売れる一方で、コモディティ卵の価格変動により業績が左右されやすい構造です。
事業は単一の報告セグメントとして扱い、主要な製品ラインは殻卵、加工した卵製品(液卵など)とバターです。 同社はミズーリの加工拠点(Egg Central Station)や新施設計画で処理能力を拡大し、既存小売での棚数増加と外食チャネル拡大、新商品の投入で成長を目指しています。
経営方針
同社は持続的かつ差別化された成長を目指しています。直近では2024年の売上高が6億63百万ドル(2023年は4億71百万ドル)に達し、2020年以降の年平均成長率(CAGR)は約29.7%です。同社はさらに家庭への浸透度(household penetration)を高めることで成長を続ける方針で、今後も販売・マーケティング投資や加工能力への設備投資を優先する計画です。手元資金は2024年末で現金・有価証券が約1億6030万ドル、与信枠として約6000万ドルを確保しており、少なくとも今後12か月の運転資金は賄える見込みとしていますが、成長投資に応じて追加の資金調達が必要になる可能性もあるとしています。
同社は差別化の核として供給網とブランドに重点投資をしています。具体的には自社の殻卵加工能力やバター事業の拡大、共同製造・共同梱包、コールドストレージや流通ネットワークの整備に資金を投入しています。また、家族経営の農場ネットワークに競争力のある価格で卵を供給することで農場の離職を抑え、安定した高品質原料の確保を図っています。費用面では、販売管理費が前年比で約3221万ドル増加しており、その内訳は人件費・株式報酬で約1550万ドル、マーケティング・仲介費で約1110万ドル、法務・専門サービスで約380万ドル、技術・ソフトウェアで約180万ドルの増加とされており、これらを成長のための投資と位置付けています。
新規チャネルと事業拡大については、小売チャネル内での店舗数拡大とフードサービス展開を二本柱にしています。2024年時点で同社製品を扱う店舗は約2万4千店に達し、主要小売の一つであるWhole Foodsが小売売上の約23%を占めています。今後はコンビニ・ドラッグストア・クラブ店・軍関係・国際市場など新たな流通先を開拓するとともに、フードサービスではROOTED社と連携した販促・共同マーケティングを通じてメニュー導入を拡大し、消費者接点を増やしてブランド認知を高める計画です。加工拠点としてはミズーリ州のEgg Central Stationに加え、インディアナ州シーモアでの洗卵・梱包施設の整備を予定しており、これにより供給能力を高める狙いです。ただし、新製品投入や買収による拡大は統合コストや希薄化リスクを伴うため慎重に進める方針です。
技術面では業務効率と品質管理の向上を目的にIT投資を進めています。基幹業務システム(ERP)の導入を進めており、同社はこれが業務プロセスや在庫・販売管理の改善につながる一方で導入時の業務混乱リスクも認識しています。クラウド型サービスの導入費用は適宜資本化しており、ソフトウェア関連費用は増加傾向(前年増加額約180万ドル)です。生産現場ではミニントレーサビリティや卵選別機(Moba社のグレーディング装置)など設備投資を進め、さらに感染症対策としてEDS用ワクチン調達など衛生・バイオセキュリティの強化も技術的取組みとして行っています。これらは長期的に品質安定と供給の回復力を高め、ブランド価値の保全につながることを目指しています。