Vertex, Inc.VERX

時価総額
$31.5億
PER
間接税ソフト・eインボイスの最大手。クラウド間接税ソリューションとeインボイスネットワークを展開。2024年8月にオーストリアのecosioを1.69億ドルで買収、2024年5月に税務AI技術を取得。米国中心に欧州・ラテンアメリカで展開。

事業内容

Vertex, Inc.は主に企業向けの間接税(売上税や付加価値税)管理を支援するクラウド型ソフトウェアと関連サービスを提供しています。 同社は取引ごとの税率判定や納税レポートの生成、請求書の電子化などを一体化した仕組みで、企業の税務処理を自動化・効率化しています。

同社の顧客は大企業や中堅企業、流通や製造、デジタルマーケットプレイスや会計・アウトソーシング事業者など多様で、フォーチュン500企業の多くも含まれます。 収益は主に定期課金のソフトウェア収入が中心で、導入・保守やコンサルティングなどのサービス収入や利用拡大に伴う追加課金で成長を図っています。

事業は一つのセグメントで運営し、税率判定エンジンや国別税務コンテンツ、コンプライアンス報告機能などを製品ラインとして展開しています。 最近は電子請求や税の自動分類に関する買収を通じて機能を拡充し、各社の基幹系システムと連携する形でクラウド運用やアクセス管理を強化してグローバル展開を進めています。

経営方針

同社は持続的な成長を目指しています。2024年の売上高は6億6,680万ドルと前年の5億7,240万ドルから拡大し、Adjusted EBITDAは1億5,190万ドル(2023年は1億80万ドル)と改善しています。一方で2024年は5,270万ドルの純損失を計上しており、同社は投資を先行することで短期の収益性が圧迫されるリスクがあることを認識しています。既存顧客からの拡大が主要な成長ドライバーであり、2024年の純収益維持率(NRR)は109%、総収益維持率(GRR)は95%と高水準を維持しているため、継続的な顧客からの収益成長を重視しています。

同社は重点投資分野として営業・マーケティング、人員拡充、製品開発を挙げ、特にクラウド型サブスクリプションへの移行に注力しています。クラウドベースのサブスクリプションはソフトウェアサブスクリプション収入の49%(2024年)を占め、前年比で比率が上昇しているため、同社はクラウド比率をさらに高め、顧客あたりの年間経常収益(ARR:1顧客当たり約122,706ドル、顧客数4,915)を伸ばすことを目指しています。差別化要因としては、幅広い税・コンプライアンスデータ(コンテンツ)と、主要ERP・CRM・eコマース等のプラットフォーム連携を通じたパートナーエコシステムを強みとしています。

新市場開拓と事業拡大では、同社は国際展開を重要戦略と位置づけ、特に欧州やラテンアメリカでの事業強化を図っています。2024年8月に買収したe-invoicing事業(ecosio)は買収対価約1億6,982万ドル(買収時点)で、各国の付加価値税(VAT)や電子インボイス義務への対応力を高めるためのものです。加えて、デジタルマーケットプレイスや会計・アウトソーシング事業者との関係を深めることで取引カバレッジを広げ、新規顧客獲得を促進しています。2024年には資金調達として3億4,500万ドルの転換社債を発行しており、得た資金は将来の成長投資や戦略的買収に充てる予定です。

技術革新への取り組みでは、同社は研究開発と製品イノベーションを継続的に投資しています。社内のイノベーションラボで次世代の税ソリューションを試作・検証し、速度や使い勝手、国別コンテンツの充実を図っています。2024年には税カテゴリーマッピング向けのAI技術を外部から取得するために約6,075ドルの資産買収を行い、ジェネレーティブAIを用いた製品も展開予定です。また、複数の地域に分散したデータセンター運用や細かなアクセス制御などでセキュリティと可用性を確保しつつ、クラウド移行を通じて長期的なARR拡大と追加ライセンス販売の機会を創出することを目指しています。