Valaris LtdVAL

時価総額
$38.1億
PER
海洋掘削契約サービスの大手。ジャックアップ・フローター掘削リグの保有と運航を展開。2024年に非支配持分の取得・移転、600百万ドルの自社株買い枠設定。北米・南米・欧州・中東・アジア太平洋(非米国売上比率84%、2024年)で展開。

事業内容

Valaris Ltdは、海洋油田向けの契約掘削事業を世界規模で展開しており、海上の掘削リグを保有して石油・ガス井の掘削作業を行っています。主力は海面に浮かぶタイプや海底に脚を下ろすジャッキアップ型などの掘削リグと、それに伴う掘削運用や要員・機材の管理です。

同社の主要顧客は大手国際石油会社や国営、独立系の油ガス事業者で、上位数社が売上の大きな割合を占めています(直近では上位5社で約半分の売上を占めた年もあります)。収益は日割りの稼働料や長期契約に基づく固定収入が中心で、契約は競争入札で決まることが多く、地域別の需要変動や顧客の契約条件が収益に影響します。

事業は大きく浮体型リグとジャッキアップリグに分かれ、これらを地域別に配備してアメリカ、欧州、アジア太平洋、中東・アフリカなどで運用しています。加えて同社は自社保有リグの運用に加え、第三者所有のプラットフォーム向けの管理業務も行い、掘削作業の企画・実行・保守まで一貫したサービスを提供しています。

経営方針

同社は株主価値の向上と収益性の改善を成長戦略の中心に据えています。具体的には取締役会が最大6億ドルの自社株買い枠を承認しており、2024年には約1.25億ドルを買い戻しました。また、信用契約に基づく財務制約を遵守しつつ、リースや借入の残高を抑えて流動性を確保することで、安定した資本配分を目指しています。売上構成では2024年に非米国事業が全体の約84%を占めており、国際市場での契約獲得と設備稼働率の向上を通じて成長を図る方針です。

同社は重点投資分野としてリグの維持・近代化と安全管理に重点を置いています。全リグを保有するビジネスモデルを採り、自己保有設備の信頼性向上に資本を振り向けることで、入札競争での差別化を図っています。2024年の資本プロジェクトに関連して資本化された利息は約1,590万ドルであり、保険プログラムは業界水準の賠償カバー(最大約8億50万ドル)を備えています。主要顧客5社で売上の約49%を占め、単一顧客(BP)が約17%を占める集中度の高さを踏まえ、既存顧客との長期契約維持にも注力しています。

同社は新市場開拓と事業拡大のため、地域別の展開を積極的に進めています。中東・アフリカ、アジア太平洋、米州、欧州など複数の地域で営業基盤を持ち、ジョイントベンチャーや非支配持分の取得・再配分などを通じて現地パートナーと協調した事業展開を行っています。入札中心の業界特性から、競争力のある価格設定と高い運用実績でバックログ(受注残)の拡大と稼働率引き上げを狙っており、これが短中期の収益拡大計画の一部となっています。

同社は技術革新とリスク管理面でも投資を進めています。サステナビリティや新エネルギーに特化した専任部署と、取締役会の安全・サステナビリティ委員会を設置し、TCFD(気候リスク開示)やSASBなどに沿った情報開示を行い、スコープ1〜3の排出量を報告しています。排出削減技術の開発は継続的な投資課題であり費用増の可能性も認識しています。併せてサイバーセキュリティに関してはインシデント対応方針や年次訓練、模擬演習を実施するなど組織的な防御力強化に取り組んでおり、これらを通じて顧客からの信頼確保と運用上の差別化を図っています。