URBAN ONE, INC.UONE

時価総額
$3937.4万
PER
ラジオ放送を中心とする米国最大手メディア企業。都市向けラジオとデジタルブランド(TV One、Interactive One)を展開。2023年8月にコックス系ヒューストン局4局を約2750万ドルで買収。米国中心に展開。

事業内容

URBAN ONE, INC.は、主にアフリカ系アメリカ人や都市部の視聴者をターゲットにしたマルチメディア事業を展開する企業で、地元ラジオ局の運営やケーブルテレビチャンネル、デジタルメディアを中核サービスとしています。同社は番組制作や配信、ストリーミングを通じて音声・映像コンテンツを届け、広告やスポンサー付きの編成で展開しています。

主要な顧客は広告主や広告代理店であり、広告売上が同社の収益の大部分を占めます。また、ケーブル事業に対する配信料や、番組のシンジケーション(放送権の販売)、デジタル広告やスタジオサービスなど多様な収益源を持っています。収益は景気や広告出稿の動向に影響されやすく、主要市場への依存度が高い点が特徴です。

事業は大きく四つのセグメントに分かれ、ラジオ放送部門では複数の市場で局を束ねて異なる年齢層や嗜好を狙うクラスター戦略をとり、地域広告を中心に収入を得ています。リーチメディア部門は全国配信の番組や人格(パーソナリティ)を通じたシンジケーション収益を担当し、デジタル部門はニュースやエンタメ系のウェブブランドやコミュニティ運営を通じてディスプレイ広告やスポンサー収入を獲得しています。ケーブルテレビ部門は専用チャンネルの編成と配信で視聴料やライセンス収入を得ており、これらを組み合わせて総合的に事業を運営しています。

経営方針

同社はまず財務の立て直しと収益性の回復を目指しています。2024年の連結売上高は約4.50億ドル($449.7M)、調整後EBITDAは約1.03億ドル($103.5M)ですが、のれん等の減損で純損失は約1.05億ドル($105.4M)となりました。これを受けて同社は現金保有約1.376億ドル($137.6M)と未借入のABL枠50.0百万ドルを活用し、債務の買戻し(2025年に2028年債を約1,700万ドルで買戻し)や自社株買い(2024年の買い戻しや2025年以降の追加取得)で資本構成の改善を図っています。短期的な数値目標は公表されていませんが、営業利益水準の回復と財務健全化を優先課題としています。

重点投資はコアのコンテンツと広告事業、そしてオーディエンス基盤の強化です。同社はアフリカ系米国人や都市部の視聴者を主対象とする番組、ラジオ局クラスタ戦略、ケーブルのTV One、デジタル媒体(Interactive One系サイトやBossip等)、番組配信・シンジケーション(Reach Media)に資源を集中させています。具体例としては、2023年にヒューストンのラジオクラスターを約2,750万ドルで取得し、Reach Mediaの持分を95%に高めるなど、地域市場の拡大とコンテンツ権益の強化で差別化を図っています。また広告商品と営業力の強化により、デジタル広告の単価向上とクロスメディア販売を狙っています。

新市場開拓と事業拡大は番組配信の拡大と放送局ネットワークの増強が柱です。同社は時間貸し放送契約(TBA)で新市場へ比較的低リスクに参入し、2024年にはオハイオ州コロンバス局での放送を開始、将来の買収オプションを維持しています。加えて、KROIやKTHTのような資産売却・再配置で規模を最適化しつつ、買収とTBAによる市場シェア拡大で広告収入基盤を広げる計画です。人材維持のための株式報酬制度の調整や、自己株式買いの余地(2024年時点で約1,350万ドルの枠残)も、成長投資と株主還元の両立に向けた具体策です。

技術革新では内部管理と配信基盤の近代化が進んでいます。同社は会計・報告プロセスの自動化のためにクラウドERPの総勘定元帳導入や財務報告ソフトの実装を進め、仕訳承認や勘定調整の統制を強化しています。IT面では資産管理ソフトや調達システムの導入で購買管理と資産認識の改善を行い、アクセス制御や変更管理の再設計、従業員向けのセキュリティ教育、外部のセキュリティ専門家による脆弱性診断・インシデント対応を実施しています。なお2025年に発生した不正アクセスについてはフォレンジック調査と対応が継続中で、同社は保険や外部支援を活用して影響の最小化を図っている点も投資家は押さえておくべきです。