Trinseo PLCTSE

時価総額
$2821.7万
PER
特殊材料・コンパウンドの大手。PMMAシート、TPE、SBラテックスなどの製品群を展開。2010年ダウから分離、2014年6月NYSE上場、2022年1月Heathland買収。北米・欧州・アジア中心に約80か国で展開。

事業内容

Trinseo PLCは特殊素材と持続可能なソリューションを提供する企業です。同社は高機能プラスチックの配合品やラテックス系バインダー、アクリル板(PMMA)や軟質樹脂(TPE)などを設計・製造し、顧客の外観や性能要求に合わせた素材を供給しています。同社は世界各地に製造拠点と研究開発施設を持ち、パイロット設備で新しい生産技術の実用化も支援しています。

同社の顧客は自動車、消費者向け電子機器、建築、紙・板紙、フットウエア、医療など幅広い分野の大手企業が中心で、約80カ国に販売しています。自社の直販チームを軸に代理店やチャネルも活用し、顧客ごとの仕様対応や長期的な取引を通じて安定した収益を確保しています。特にコーティング・接着剤・シール材や電池関連(CASEやバッテリー)向け製品は高い成長性と利幅を見込んでいます。

事業はラテックス系バインダーと高機能材料などのセグメントに分かれており、ラテックスでは塗工用紙やカーペット向けの製品で強い市場地位を持っています。高機能材料ではPMMA(アクリル)シートやTPE(軟質樹脂)などを建築、輸送、電子機器、ウェルネス製品向けに供給し、色合わせや軽量化・塗装代替といったニーズに応えています。加えて、リサイクル設備やグローバルな研究開発ネットワーク、共同事業を通じて製品開発と供給の一貫性を高める取り組みを進めています。

経営方針

同社は事業ポートフォリオを「景気に左右されにくい高成長・高収益のスペシャリティ材料および持続可能ソリューション提供者」に転換することを戦略の中核に据えています。2024年の連結売上高は約35.1億ドル、調整後EBITDAは約2.037億ドルであり、同社はこれらの業績指標を改善しつつキャッシュフローの安定化と収益率向上を目指しています。低採算・循環性の高い製品や非戦略的資産の整理を進め、設備閉鎖や人員削減などのリストラでコスト構造をスリム化する施策を実行しています。

重点投資分野は、複合材料(コンパウンディング)とコーティング・接着剤・シーラント・エラストマー(CASE)用途など、より高い成長とマージンが見込める領域です。ラテックスバインダ事業ではCASE向けが2024年の同セグメント売上の約14%を占め、同セグメント平均の約2倍のマージンを確保しており、同社はこうした高付加価値用途へ資源を集中させています。また、研究開発・技術支援(R&DおよびTS&D)への投資も継続しており、2024年のR&D費用は約6,350万ドルに達しています。

新市場開拓と事業再編では、非中核分野の売却やジョイントベンチャーを含む戦略的選択肢の検討を進めています。具体的には、スチレン系事業(ポリスチレン等)について分離・売却の選択肢を引き続き評価しており、バージンのポリカーボネート製造から撤退して外部調達へ移行するなど、製造ネットワークの最適化を進めています。グローバルには33の製造拠点と29サイト(14か国)で事業を展開しており、米国約9.99億ドル、欧州約16.81億ドル、アジア太平洋約7.12億ドルの地域別売上構成を基に成長機会を狙っています。

同社は技術革新を通じたサステナビリティの実現を強く掲げています。事例として、オランダ・テルネーゼンでのポリカーボネート溶解パイロット(2023年4月稼働)、同地でのABS溶解パイロット(2024年7月稼働)、イタリア・ロでのPMMAの脱重合(分解)プラント(2024年6月稼働)など、廃プラスチックを高付加価値材料に戻すリサイクル技術へ具体的に投資しています。これらは既存技術に比べより多くのPMMAを回収可能にするなど差別化要素となっており、同社は持続可能な原料調達と差別化製品の両立を目指しています。