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Terreno Realty CorpTRNO
事業内容
Terreno Realty Corpは公開不動産投資信託(REIT)で、米国沿岸の主要6地域にある工業用不動産への投資・保有を主力としています。同社は主に倉庫や物流施設、多用途の工業スペース、改善済み土地を取得して賃貸し、保有物件の再開発や改修、拡張にも積極的に取り組んでいます。日常の物件管理は現地の第三者管理会社に委託することが多く、必要に応じて直接管理することもあります。
主要な顧客は物流業者や電子商取引企業などの入居企業で、賃料収入が同社の収益の中心です。賃貸契約は一般に3〜10年程度が多く、契約更新や再賃貸の際の賃料改定や、保有物件の売却による差益も収入源になります。賃料のリセットや改修、再テナントで資産の利回りを高めることを重視しています。
同社は会計上は一つの事業セグメントとして資産を一括管理しており、保有物件は倉庫・配送拠点、多用途施設、中継用輸送拠点、改善済み土地などに分かれます。取得対象は満室で安定した物件から空室や再生余地のある物件まで幅広く、必要に応じて近接地を取得して拡張することも行っています。資金調達は物件売却や株式・債券の発行、借入を組み合わせて行い、得た資金を高リターンが見込める物件に再投資する方針です。
経営方針
同社は1株当たりの純資産価値(NAV)を高めつつ、株主還元も重視する成長を目指しています。具体的には、2024年に約8件の物件と1つのポートフォリオを合わせて約8.845億ドルで取得するなど積極的な買収を行い、必要に応じて公募・ATM(上場随時売付)や社債、借入を組み合わせて資金調達を行っています。資本政策の一環としては、2024年の公募で純収入約3.87億ドルを確保し、500百万ドル枠のATMでは年末時点で約4.383億ドルの残余枠があり、リボルビング・クレジット枠600百万ドルに対しては2025年初め時点で約82.0百万ドルの借入、現金約18.1百万ドルを保有している点が挙げられます。配当面では四半期配当を継続しており、2025年2月に1株あたり0.49ドルの現金配当を決議しています。
投資の重点分野は米国沿岸部の6大市場にある「都市部のインフィル(市街地内)型」工業用不動産で、港湾や空港、主要幹線に近く、新規供給が制約されているサブマーケットを狙っています。同社は未整備の土地やグリーンフィールドの大規模開発は基本的に追わず、既存の改修・再開発や隣接地の取得で付加価値を引き出す戦略を取っています。差別化としては地域に根差した取得基準(再取得コストより安い取得価格や柔軟な間取りなど)に加え、地元の第三者プロパティマネジャーを活用することで運営の柔軟性を確保しており、実際に2024年の再リース・新規リースでは一部で賃料が四半期ベースで約26.7%、年間で約36.5%上昇するなど賃料上昇を取り込んでいます。
新規市場開拓や事業拡大は「6市場集中」という枠組みを維持しつつ、取得機会の質や価格、そして同社株の市場価格とNAVとの関係を踏まえて慎重に行う方針です。取得件数や投資規模は無条件に拡大するのではなく、運用上の判断が直接行える規模にとどめる意向を示しており、必要に応じて資産を売却して得た資金を再投資するか株主に還元することで1株当たりの価値向上を図っています。財務面では長期目標として総負債比率を企業価値の35%未満、固定費カバレッジ比率を2.0倍超、ネットデット/調整後EBITDAを5.0倍未満、変動金利負債を総負債の20%未満に抑えるなど、安定した資本構成の維持を目指しています。
技術面では主に運用とリスク管理を支えるIT基盤と情報セキュリティの強化に取り組んでいます。社内外の業務継続性を高めるためにパスワード管理や年中の教育モジュール、定期的なバックアップと冗長化されたデータシステムを導入しており、サイバーリスクへの対策を講じています。また、投資判断や物件評価には割引キャッシュフローや市場の比較事例といった定量的な評価手法を用い、最高経営責任者(CODM)が資産単位での収益性をレビューして意思決定に反映させるなど、データに基づく投資プロセスを重視しています。