TEEKAY TANKERS LTD.TNK

時価総額
PER
原油・石油製品タンカーの大手。フルサービスのSTS(船舶間移送)とライトニング事業を展開。2024年12月にオーストラリア事業を9,220万ドルで買収、2024年10月に本社をバミューダへ移転。米国メキシコ湾岸・カリブ海・オーストラリア中心に展開。

事業内容

TEEKAY TANKERS LTD.は原油や精製石油製品用のタンカーを所有・運航し、スポット市況の上振れを取り込む一方で、定額の期船契約や米国湾岸でのフルサービス・ライタリング(艦船間積替え)契約を組み合わせて収益の下振れを抑える航海戦略を取っています。加えて、商業管理や運航・整備といった海事サービスも手掛け、景気循環の影響を和らげる安定収入を確保しています。

同社の主要顧客は大手エネルギー会社(民間および国営)、精油所、石油トレーダーや政府機関などで、収益はスポット 航海収入、短期・中期のタイムチャーター料、フルサービスのライタリングや船舶管理のフィーから成ります。さらに他社と結ぶ収益分配契約により、複数所有者の船をまとめて運用して得られる分配収入も収益源になっています。

事業の中核はスエズマックスやアフラマックス(LR2を含む)といった中型タンカーの運航で、LR2クラスの製品船も保有しています。米国湾岸でのフルサービス・ライタリングや船舶間(STS)支援、オーストラリア向けの海事サービスと技術・乗組員管理などを組み合わせ、船舶のチャーターイン・チャーターアウトや売買を通じてフリートの最適化と収益性向上を図っています。

経営方針

同社は成長戦略としてスポット取引の上振れを取り込む一方で、タイムチャーター(一定期間の固定運賃契約)やフルサービスの洋上補給(フルサービス・ライタリング)で下振れリスクを抑えるハイブリッド戦略をとっています。具体的にはカリブ海から米国メキシコ湾へのスポット取引を重視しつつ、米国メキシコ湾でのフルサービス・ライタリング事業を基盤化して艦隊の稼働率向上と平均収入の底上げを図る方針です。また収益の安定化策として、船舶収益を参加船で按分する「収益分配契約(RSA)」を活用しており、2024年12月末時点でRSA対象のスエズマックス船25隻、アフラマックス/LR2船20隻(加えて第三者保有船3隻)が含まれている点が挙げられます。

重点投資分野は洋上補給(STS)と艦隊の選択的更新、そして運航管理能力の内製化です。同社はUSG(米国メキシコ湾)でフルサービスのライタリングを提供する数少ない事業者の一つであり、これにより大手顧客の需要を取り込みつつ安定したキャッシュフローを確保することを目指しています。財務面では2024年末にティーキー・コーポレーションからオーストラリア事業や管理会社を取得しており(取得金額は純考慮後で約9,220万米ドル相当)、また2025年に2019年建のアフラマックス/LR2船を買船予定にするなど、選別した買船・売船で艦隊の世代交代と収益性向上を図っています。

新市場開拓と事業拡大では、洋上補給とカリブ海〜米国メキシコ湾のスポット連携を核に、オーストラリアの海運サービス市場への参入を加速しています。オーストラリア事業の獲得により現地のメンテナンスや運航サービスを直接提供できるようになり、地域ごとの商機を掴む体制を整えました。さらに短期のスポット機会を取り込む一方で、長期的にはライタリングや商管サービスによる変動の少ない収入ポートフォリオを拡大し、景気循環(サイクル)による業績変動の軽減を目指しています。

技術革新への取り組みでは、サイバーセキュリティと運航効率化への投資を進めています。同社はティーキーグループのリスク管理プログラムに組み込まれたサイバーセキュリティ体制を構築し、NISTのフレームワークに準拠した定期的な評価を実施しています。また、RSAで各船の速度や燃料消費など性能指標を定期的に再評価する仕組みを採用し、燃費改善や運航スケジュール最適化によるコスト低減を図っています。顧客や金融機関からの環境・安全面の要求が高まるなか、同社は規制対応や燃費改善を通じてESG対応の強化を目指しています。