TMC the metals Co Inc.TMC

時価総額
$18.7億
PER
深海多金属団塊の探査・採取・加工の新興企業。ニッケル・コバルト・マンガン等の金属回収技術、低廃棄プロセスを展開。2019年にAllseasと戦略提携、2023年にPMTS完了で株式決済、2024年にTOMLを総額$32.0 millionで買収。米国・カナダ・トンガ・ナウル・欧州での展開。

事業内容

TMC the metals Co Inc.は、深海に存在する多金属結節(ノジュール)の探査と回収を行い、そこから得られるニッケル、銅、コバルト、マンガンなどの重要金属を原料にした製品の生産を目指す資源開発企業です。同社は洋上の収集システム開発と、回収した原料を陸上で処理して中間材や最終製品に加工する事業を主力としています。

同社はまだ商業生産段階に入っておらず、現在の収入は主に株式発行やワラント、提携契約や融資などの資金調達が中心です。将来的には電池メーカーや自動車・電子機器メーカー、製鋼や化学分野の企業を顧客として、処理済みの金属や中間製品の販売で収益を上げる計画です。

事業は海底探査・採取契約の取得と調査、洋上回収システムの設計・建造・運用、そして陸上での冶金処理と製品化の三本柱で進めています。特に海洋収集技術の開発でAllseasなどと協業し、特許やノウハウを蓄積しつつ、将来的に合金や電池向け前駆体などの製造ライン構築を目指しています。

経営方針

同社は海底に存在するポリメタリックノジュール(ニッケル、コバルト、マンガン、銅を含む塊)の商業化を成長の中心に据え、まずは探査段階から実稼働へ移行することを目指しています。経営陣はパイロット段階での実績を基に商業生産へとつなげる計画で、プロジェクトの目標の一つとして、Allseasと共同で開発する「Project Zero」で年間少なくとも1.3百万トン(湿った状態)のノジュール処理能力を想定しています。2024年の探査・開発関連支出は約5,064万ドルに達しており(うち採掘・技術開発に約2,239万ドル)、これらの投資を通じて探索から操業準備への移行を加速させようとしています。

重点投資分野は、大きく分けて海底回収システムと陸上処理設備の両輪です。海上側ではAllseasと結んだパイロット採掘システム(PMTS)を基に商業用収集システムを拡張すること、陸上側では既存の加工設備(PAMCO)を活用し、近-zeroに近い固形廃棄物排出を目指す処理プロセスを構築することに注力しています。差別化策としては、回収と処理を一体化して供給チェーンを短縮する点を掲げており、同社は米国向けに加工すれば従来の輸送距離を「約50,000マイルから約1,500マイルに圧縮できる」として供給リスク低減を強調しています。また知財面では回収・処理技術に関する特許出願を世界各地で進め、技術的優位性で競合との差をつけようとしています。

新市場開拓と事業拡大については、国際海底機関(ISA)による採掘規制の整備や各国の需要動向を見据えつつ、NORIやTOMLといった既存の探査契約を商業採掘に結びつけることを目指しています。既にTOMLの買収により探索契約関連資産を組み入れており(買収前の簿価は約4,270万ドル相当の探索契約等)、操業に移る際には追加の陸上処理拠点建設や中間製品(ニッケル・銅・コバルトのマット)の製造拠点設置も視野に入れています。資金面では信用枠の拡充や株式発行、ATM(随時売却)での資金調達を活用しており、2025年3月時点で貸借枠の上限を合計4,400万ドルまで引き上げる改定を行うなど、設備投資と操業移行に向けた資金確保を図っています。ただし株式やワラントの発行による希薄化リスクも存在するため、経営はバランスを取りながら拡大を進めています。

技術革新への取り組みとして、同社はパイロット試験の成果を踏まえて技術の実証とスケールアップに重点を置いています。2024年には技術開発関連で約2,239万ドルを投じ、海底収集機器の改良、輸送・陸上処理の工程最適化、そして環境影響を抑える処理法の開発を進めました。長期的には、処理工程での副生成物最小化や中間製品化による需要側での汎用性確保を図る方針で、これらを支えるために特許出願と外部パートナーとの共同開発を積極化しています。環境・安全対策にも注力し、既存パートナーの安全管理体制やEHS(環境・健康・安全)プログラムを活用してリスク低減を図ることを明確にしています。