TUCOWS INCTCX

時価総額
$2.5億
PER
ドメイン登録・ホスティング・BSS/OSSの有力企業。OpenSRS等で2450万件のドメイン管理、ホスティドメールと姓ドメイン36,000件を展開。2020年のEchoStarへのモバイル資産売却、2022年8月のシリーズA優先出資契約。米国・欧州中心に展開。

事業内容

TUCOWS INCは、ドメイン名の登録管理やメール・インターネット関連サービスを中心に事業を展開しています。 同社は大口向けのドメイン卸売、個人・中小企業向けの小売、クラウド型のメールや付加価値サービス、通信事業者向けのプラットフォーム提供などを手掛けています。

同社の主要顧客はウェブホスティング事業者やISPなどのリセラーと、個人や中小企業の登録者、通信事業者(CSP)です。 収益はドメイン登録の前払い(更新での継続収益につながる)や、Waveloのようなプラットフォームの月次課金・従量課金、ホステッドメールやWHOISプライバシーなどの付加価値サービスから成り立っています。

事業は大きく「Tucows Domains」「Wavelo」「Ting」のセグメントに分かれています。 Tucows DomainsはOpenSRS/eNom/EPAG/Ascioといったブランドで約2450万件のドメインを管理し、卸売・小売・期限切れオークション・姓ドメインを使ったRealNamesなどを展開しています。 WaveloはMONOSやISOSなどのプラットフォームで通信事業者向けの課金・オーケストレーション・プロビジョニングやプロフェッショナルサービスを月次で提供し、Tingは主に高速のファイバーや固定無線のアクセスサービスを運営しています。

経営方針

同社はドメイン登録事業、BSS/OSSプラットフォーム(Wavelo)、および家庭向け高速回線(Ting)の三本柱で成長を目指しています。直近ではOpenSRS、eNom、EPAG、Ascioで合計約2450万件のドメインを管理しており(2023年末比で約10万件の減少)、ドメインを引き続き主力収益源に据えつつ、株主還元としては2025年2月に承認した最大4,000万米ドルの自社株買い枠を活用する方針です。一方で、2024年10月の「資本効率化計画」に伴う設備の減損処理17.7百万ドルなどコスト最適化も進めており、同社は収益性と成長投資の両立を目指しています。

同社は重点的に投資する分野として、Tingの光ファイバー網拡大、Waveloのプラットフォーム強化、そしてドメイン周辺の付帯サービス拡充を挙げています。具体策としては、Tingのネットワーク拡大資金を確保するためにGenerateとの優先出資・買戻しに関する合意や2023〜2024年発行の社債・クレジット枠(総額約2.4億ドル、2024年末時点で約1.954億ドル借入)を活用する計画です。差別化要素は1999年にICANN認定を取得した長期のレジストラ実績と、リセラー重視の営業チャネル、ドメインの満期前オークションやホスティング・メール等の付加価値サービスでのクロスセルにあります。経営陣インセンティブもTing・Wavelo・ドメインの達成度合いに連動しており(例:CEOの2025年目標賞与は50%がTing、20%がWavelo、30%がTucows Domainsに連動)、経営と事業投資の整合性を図っています。

新市場開拓と事業拡大では、同社はTingの都市・町への光ファイバー展開を加速することを中心に据えていますが、そのためには追加資金調達が必要であると明示しています。Waveloは現在EchoStar向けの収入比率が高く(2024年は約10.7%がEchoStar関連収入)、ここを基盤に他の通信事業者(MVNO/MNO)への水平展開を狙っており、月額の利用料型課金や長期契約を通じた顧客拡大を計画しています。リスク管理面では、EchoStar関連の10年支払スキームや、保持したMNO契約に伴う最低コミットメント違反で2024年に約130万ドルの罰則を見積もるなど、契約条件と資金計画を踏まえた慎重な拡大を進めています。

技術革新については、同社はWaveloのMONOS、ISOS、SMや従来のPlatypusといったプラットフォームを進化させ、課金・プロビジョニング・ネットワーク制御などの機能を統合することで事業者向けの差別化を図っています。ドメイン側では登録期間に応じて前受けを按分計上する会計処理を前提に、満期前のネーム収益化やホスティング/メール等の付加価値サービスで顧客あたりの収益を引き上げる施策を実行中です。また、データセキュリティやエネルギー効率に関する投資、そして役員・従業員の長期インセンティブ(株式報酬の多年ベスティング)を通じて技術と人材の両面で持続的な競争力強化を目指しています。