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SuperCom LtdSPCB
事業内容
SuperCom Ltdは、電子政府向けのID管理や国境管理システム、IoTを活用した監視・追跡機器、そしてサイバーセキュリティ製品を主力に事業を展開しています。同社はハードとソフトを組み合わせたソリューションを軸に、独自のIoTスイート(Pureシリーズ)や端末保護ソフト、モバイル向けのセキュリティ製品を提供しています。
主な顧客は政府機関、公共安全機関、空港・港湾、大企業などで、2024年の売上高は約2,763万ドルでした。同社の収益は製品販売が中心で、2024年は製品が約2,010万ドル、サービスが約752万ドルを占め、IoT関連が売上の大部分を占める一方、上位2社で売上の約59%を占める集中度の高さが特徴です。販売は子会社や代理店、独立販売業者を通じて世界展開し、米国とイスラエルの拠点を含む小規模な直販・サポート陣が顧客支援と保守を行っています。
事業はe-Gov、IoT、サイバーセキュリティの三本柱で構成され、e-Govでは国民IDや国境管理向けの生体認証・電子旅券検出システムを提供しています。IoT部門は電子監視(居住監視やGPS追跡)や資産管理、空港の手荷物追跡などの製品ライン(PureTrack、PureMonitorなど)を持ち、サイバー部門はエンドポイント保護やハイブリッド型のセキュリティスイートを既存顧客へ展開しています。複数の買収で技術と販路を拡張し、官公庁や民間への短期導入が可能な体制を整えています。
経営方針
同社は中長期で収益性の改善と安定した成長を両立させることを目指しています。直近では売上高が2023年の2,657万ドルから2024年に2,763万ドルへと増加しており、複数年計画では粗利益率50%を目標に生産ラインとサプライチェーンの最適化を進めています。資金面では、2024年の営業活動による正味キャッシュ流出が前年より縮小したほか、各種の増資や借入条件の見直しにより短期的な資金繰りを確保しており、経営陣は現在の契約とコスト削減を前提に少なくとも12ヶ月の運転資金を賄えると見込んでいます。ただし売上の約59%が上位2顧客に依存している点は重要な集中リスクであり、同社はこれを分散することも並行して進めています。
同社は投資の重点を三つの戦略事業単位、すなわち電子政府向けのソリューション(e‑Gov)、物のインターネットを活用したIoT/接続サービス、そしてサイバーセキュリティに置いて差別化を図っています。差別化の具体策としては、過去の買収(OTIのSmartID部門、Safend、Alvarion、Prevision、LCAなど)で得た技術と顧客基盤を組み合わせた「PureSecurity」などの統合製品群を掲げ、導入から保守までを一括提供するターンキー方式で長期契約や定期課金型の収益を増やす方針です。研究開発費は2024年に前年比で約10%増加しており、製品差別化と品質維持に対する投資を継続しています。
海外展開と事業拡大では、同社は米州、欧州、アジア太平洋を主要な成長地域と位置づけています。特に過去に欧州・アジアでの営業上の制約があったため一時的に米国に注力し、米国向けに製品を最適化するとともに営業・マーケティング体制を拡充してきました。今後は国家レベルの電子政府、公共安全(電子監視や追跡)、空港・港湾の運用管理、ヘルスケア/ホームケア、スマートシティ、金融分野の決済サービスなど縦割りの市場を重点ターゲットとし、現地の代理店やシステムインテグレーターとの提携や追加の買収によって短期間での参入・受注を目指しています。
技術革新に関しては、同社は自社プラットフォームとエンドポイント保護ソフトを基盤に、新機能や新製品の迅速な投入を重視しています。これを支える具体的施策として、2023年にデータセキュリティ管理委員会と危機管理委員会を設置し、サイバーインシデントの予防・検知・対処の体制を強化しています。また、製品開発のスピード向上を目的に外部技術の取り込みや選定買収を続ける方針で、製造は基板や筐体の外部調達と自社での組立・検証を組み合わせることでコストと品質の両立を図っています。とはいえサイバー脅威や買収後の統合リスクは残るため、同社は継続的な投資と体制整備でリスク低減を図る考えです。