TD SYNNEX CORPSNX

時価総額
$119.5億
PER
IT製品の流通・ソリューションの世界最大手。システム設計・統合、物流、デポ修理、クラウドなどの付加価値サービスと20万超SKU・15万超リセラー網を展開。2021年9月の同業買収で事業統合。米国・欧州・アジアに158拠点で展開。

事業内容

TD SYNNEX Corporationは、世界中の販売代理店や小売業者向けにIT製品の仕入れ・流通を行う大手ディストリビューターです。同社はハードウェアやソフトウェアの販売に加え、在庫管理や受注・出荷、導入支援などの業務を一括して扱い、顧客が必要とするワンストップの供給網を構築しています。

顧客は付加価値再販業者、システムインテグレーター、リセラー、政府機関、大企業や中小企業など多岐にわたり、多数のリセラー網を通じて販売しています。同社の収益は取扱高が大きい一方で売上総利益率や営業利益率は相対的に低く、ある顧客が2024年に売上の約12%を占めるなど、特定の顧客や製品の構成で業績が変動しやすい特徴があります。

事業は大きくエンドポイント製品とアドバンスト製品に分かれており、エンドポイントではパソコンや周辺機器、モバイル機器が中心、アドバンストではデータセンター向けのサーバーやネットワーク、クラウド関連のソリューションが中心です。加えて物流・フルフィルメント、システム設計・組立、クラウドサービス、修理・アフターサービス、資金調達支援やマーケティング支援といった付加価値サービスで収益を補完しています。

経営方針

TD SYNNEXは「重要なソリューションの集約者(vital solutions aggregator)」になることを成長の柱と位置づけ、より高付加価値の分野へシフトすることで売上と利益の向上を図っています。直近の通期では連結売上高が約584.5億ドル、粗利益が約39.8億ドル、粗利率が6.81%となっており、Advanced Solutions(データセンター系やクラウド関連商材)を中心に成長を実現しています。同社はまた株主還元を重視しており、2024年3月に新たに2.0億ドル(注:正しくは20億ドル)の自社株買い枠を設定し、2024年11月時点で約18億ドルの買い入れ余力を確保しています。これらは同社が収益性の高い分野への投資を進めつつ、資本配分によって株主価値を高める方針を示す具体的な施策です。

同社は投資の重点を「戦略的技術」とサービスに置き、ハイブリッドクラウド、セキュリティ、データ分析、人工知能(AI)、ハイパースケール向けインフラなどに資源を集中しています。差別化の源泉は、約20万点の品目と約2,500の取引先メーカーを組み合わせた幅広い品揃えと、設計・構築・保守・物流までを一気通貫で提供できる点にあります。具体的には自社でラック統合や動作試験を行う設計・統合拠点や、158拠点で合計約1,490万平方フィートの流通施設を運営し、ロボット化やバーコード管理などで出荷精度とリードタイムを短縮する取り組みを進めています。

新市場や事業拡大は、買収による外形拡大と既存事業の深耕で進めています。同社は2021年にTech Dataを統合する大型合併を実行し(取得対価は現金約16億ドルと株式4400万株)、統合関連コストは2024年上期にほぼ完了したと報告しています。以降もOEM関係の拡大や地理的展開を通じて成長を追求しており、実績としてはAPJ地域の売上が通期で15.2%の増加(為替調整後)を示しています。将来的にも戦略的買収でサプライチェーンやサービス領域を強化する方針を掲げていますが、統合リスクや財務負担に対する注意も同社の方針に組み込まれています。

技術革新への取り組みでは、社内のデジタル化と自動化を通じて顧客体験と業務効率の向上を図っています。独自のクラウドプラットフォームを通じたクラウドサービス提供や、API・EDIによる取引連携、自動倉庫や重量チェックといった出荷検証ツールの導入などで実運用を改善しています。サイバーセキュリティ面では専任の最高情報セキュリティ責任者(CISO)を配置し、取締役会の技術委員会設置で上位層の監督を強化するなど、技術リスク管理も明確にしています。これらは同社が単なる製品流通業者から、技術とサービスを組み合わせた付加価値事業者へ転換するための具体的な投資です。