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- Salarius Pharmaceuticals, Inc.
Salarius Pharmaceuticals, Inc.SLRX
事業内容
Salarius Pharmaceuticals, Inc.はがん治療薬の研究開発を行う創薬企業で、主に小分子化合物の候補を開発しています。主力の候補薬はSP-3164とSP-2577で、いずれも臨床前から早期臨床段階にあり、まだ販売製品はありません。
同社は現時点で製品による売上がなく、資金は株式発行や私募など投資家からの調達に頼っています。研究開発は外部の受託研究機関や受託製造業者と契約して進め、大学との技術ライセンス契約や将来の承認に伴う段階的支払や販売時の分配が収入源になる見込みです。
同社は一つの事業区分で運営され、二つの主要な候補薬群に集中しています。SP-3164は特定のタンパク質を選択的に除去する新しい作用機序に基づく薬で、SP-2577はがんの進行に関わる酵素の働きを抑える薬として開発を進めています。
経営方針
同社は企業価値の向上と持続可能な資金調達を目指しています。2024年の純損失は約557万ドルに改善しており、営業キャッシュの支出を大幅に抑えて同年末の現金で「2025年第2四半期後半までの資金繰り」を確保できる見込みとしています。ただし、事業継続性を高めるためにデコイ・セラピューティクスとの合併を進めており、合併完了には少なくとも600万ドルの追加資金(Qualified Financing)が前提条件となっている点は重要な数値目標です。加えて、公開市場での流動性確保のためATM(随時売出)やELOC(最大1,000万ドルの枠)など複数の資金調達手段を活用しており、2024年にはATMで約170万ドルの資金を調達しています。
同社は研究開発を最重要投資分野と位置づけ、パイプラインの中心を小分子創薬に置いています。具体的には、SP-3164は次世代の「ターゲット型タンパク質分解」アプローチ(いわゆる分子接着剤に類する仕組み)を用いる候補で、SP-2577(seclidemstat)はLSD1という酵素の機能を抑えることでがん細胞の挙動を変える候補です。同社はこれらの差別化ポイントとして、SP-3164の新規な結合様式や、SP-2577が「不可逆ではない可逆的な結合でかつ足場タンパクとしての機能を阻害する」点を強調しており、SP-2577に関する組成権利は2032年まで、SP-3164に関する組成権利は2034年までといった具体的な知財保護期間を有しています。また、ターゲット分解関連で取得した特許群は6ファミリー、17件の付与特許と4件の出願中案件があるなど、知財で差別化を図っています。
事業拡大については、合併を通じた技術・資産の統合と資本増強を中核に据えています。合併の交換比率はデコイ側の評価を2,800万ドル、サラリウス側を460万ドルと想定しており、これを前提に合併後の株主構成や優先株の発行、従業員向けの持株制度整備(新たな株式報酬プランの導入)や場合によっては逆株式分割の実施などを計画しています。なお同社は製造・販売組織を持たないプレ商用企業であるため、今後の市場開拓や商業化は外部の製造受託先や販売パートナー、あるいは合併先との協業を通じて進める方針で、短期的には人員を圧縮してコストを抑える対策を講じています(2025年3月時点で正社員は2名)。
技術革新への取り組みは事業の中心で、研究開発の効率化と知財の強化を具体策として進めています。臨床開発や前臨床試験は外部のCROやCMOと契約して進め、臨床試験費用や研究委託費の発生状況を精緻に把握して費用計上することでキャッシュ消耗を管理しています。加えて、合併に伴う技術移転や特許ポートフォリオの統合により研究の深掘りを図る計画で、必要資金の確保(600万ドルのQualified FinancingやELOC枠の行使)を前提に候補薬の最適化と次段階の開発進捗を目指しています。