U.S. SILICA HOLDINGS, INC.SLCA

時価総額
$12.1億
PER
65.6倍
商業用シリカや珪藻土など産業鉱物の製造・販売の米国最大手。フラクサンド、珪藻土・ベントナイト・パーライトやSandBoxのラストマイル物流を展開。2023年3月に11億ドルのシニア担保クレジット契約を締結。米国拠点、約100カ国へ輸出。

事業内容

U.S. SILICA HOLDINGS, INC.は、商業用シリカを中心に工業用鉱物を採掘・加工し販売するパフォーマンス素材企業で、油・ガスの掘削で使うプロップ材(いわゆるフラックサンド)や、濾過材や充填材として使われる珪藻土、粘土、パーライトなどを扱っています。加えて、輸送や機材レンタル、契約作業員の派遣といった物流・現場向けサービスも提供しています。

同社の主要顧客は石油・天然ガス業界の掘削業者やガラス・鋳造・建材の製造業者、食品・飲料や製薬向けの濾過用途を持つ企業など多岐にわたります。売上は製品のトン当たり価格と販売量が中心で、個別の注文や短期価格契約で供給することが多く、上位10社が総売上の約44%を占める一方で、単一顧客が売上の10%を超えることはありません。

同社は事業を「Oil & Gas Proppants(油・ガス向けプロップ材)」と「Industrial & Specialty Products(工業・特殊製品)」の二つの報告セグメントで運営しています。全粒シリカはフラックサンドやガラス原料、鋳物向けに供給し、珪藻土・粘土・パーライト由来の製品は濾過材や塗料・プラスチックの添加剤など幅広い用途に使われており、同社は鉱山・加工・輸送のネットワークを活かして安定供給と現場直送(ラストマイル)を両立しています。

経営方針

同社は規模拡大と安定的な収益性の両立を成長戦略の柱としています。内部成長を基本としつつ、補完的な企業買収によって外部成長を加速する方針で、財務基盤の強化にも力を入れています。具体的には2023年に総額11億ドルのシニア担保付クレジット枠(9.5億ドルのタームローンと1.5億ドルのリボルビング)を整備し、同年末の現預金は約2億4570万ドル、運転資本は約4億1490万ドル、連結レバレッジは1.91倍といった資金余力を確保しています。一方で、需要低迷局面では固定費の性質上コスト構造を迅速に縮小しにくい点を認識しており、資源・コスト・生産能力の適時調整を目指しています。

重点投資分野は鉱山・加工設備、物流網、製品開発の三点に集約されています。原料保有量は商用シリカで4億7900万トン、加工可能な完成品換算で1億7700万トンをコントロールしており、鉱区とプラントを自社で保有することでロイヤルティ負担を抑制(2023年は売上の約0.4%)するとともに低コストでの提供を目指しています。物流面ではバージや主要鉄道への接続、現場への「ラストマイル」配送サービス(SandBox)を強化し、納入の確実性とコスト競争力で差別化を図っています。顧客との技術連携や材料工学・石油工学の社内リソースを活用し、用途別の高付加価値製品で市場シェア拡大を目指しています。

新市場開拓と事業拡大については、既存の米国内ネットワークを基盤に海外販売の拡充と買収による領域拡大を並行して進めています。EP Mineralsを通じた白土やデイアトマシャスアースなどの特殊鉱物は約100か国への輸出実績があり、工業・特殊用途分野は2023年の売上で約36%を占めるなど顧客基盤の多角化を進めています。買収は成長の重要手段と位置づけられる一方で、埋蔵量評価や統合リスク、資金調達による流動性低下など具体的なリスクも存在するため、同社は資本配分(配当や自社株買い含む)を慎重に判断しながら拡大を図る方針です。

技術革新への取り組みは製品改良と物流ソリューションの両面で進められています。同社は研究開発チームにより高付加価値の専有技術や特許対象となる製品ラインを育成しており、SandBoxに関しては特許出願や発明の保護を進めています(発行済み特許の有効期限は案件により2026〜2041年にわたるものがあるとしています)。また、製造プロセスの自動化や品質管理、サプライチェーンの効率化を通じて生産性を高める一方で、サイバーセキュリティや事業継続のための体制整備も進め、知的財産と運用の安全性を確保しながら競争力の維持を目指しています。