Skillz Inc.SKLZ

時価総額
$9291.6万
PER
スキルベースのモバイルゲームプラットフォームの有力企業。大会運営や報酬制度「Ticketz」、開発者向け分析ツールを展開。2021年7月にAarkiを買収、ARKやAtlasが出資。米国中心に11カ国で展開。

事業内容

Skillz Inc.はモバイル向けの競技型ゲームプラットフォームを運営しており、開発者が賞金付きのトーナメントを組み込める仕組みと、プレイヤーが対戦して報酬を得る体験を提供しています。同社はマッチメイキングや決済、チート対策、顧客サポートなどの運営機能を一体化したサービスでゲームの対戦環境を支えています。

同社の主要な顧客はゲーム開発者とエンドユーザーで、収益の大半は有料エントリー型トーナメントからの手数料やプラットフォーム使用料によって生まれます。加えて広告やマーケティング支援、ロイヤルティプログラムの運用が収益に寄与しており、ロイヤルティで付与する「Ticketz」の多くがボーナス現金に換金される点がプレイヤーの再課金につながっています。

事業は大きくプラットフォーム運用、開発者向けツール、プレイヤー向け体験の三分野で展開しています。具体的には大会の運営と信頼・安全対策、開発者向けのユーザー獲得や分析ツール、プレイヤー向けの報酬プログラムやアプリ内ストアを組み合わせて収益化を図っています。さらにマーケティングや広告技術の強化、戦略的な買収による機能拡充にも取り組んでいます。

経営方針

同社は2023年以降、「成長よりも収益性を優先する」方針へシフトしています。具体的にはユーザー獲得(UA)マーケティング支出を75%削減し、エンゲージメント系マーケティングも45%削減した結果、UAで約8,790万ドル、エンゲージメントで約5,230万ドルの支出減を実現しました。このコスト最適化により、総務・管理費は前年から6,640万ドル減の9,670万ドルとなり、営業・マーケティングでは人員を15%削減するなど構造改革を進めています。同社はさらなる株主還元と資本効率の改善を目指しており、最大6,500万ドルの自社株買い枠を設定、2024年8月15日までに410万株を平均5.78ドルで買い戻し(約2,390万ドル)しています。

重点投資分野はプラットフォームの収益化とユーザー維持にあります。開発者向けの技術ツールやデータ分析による広告最適化を通じて、ユーザーの獲得・定着・課金率を高めることに注力しており、ロイヤルティ通貨「Ticketz」は2023年に約96%が現金ボーナスに換金されるなど高い収益転換性を示しています。差別化の核としては、不正対策や24時間対応のカスタマーサポート、開発者との信頼関係構築があり、知的財産の保護にも力を入れていて、全世界で130件を超える特許を保有しています。また、インド拠点の開設や従業員向けの株式報酬制度で優秀な人材を確保する戦略を採っています。

新市場の開拓と事業拡大では、積極的なM&Aや戦略投資を継続的に評価していますが、過去のAarki買収ではのれんなどの評価減が発生したため、買収後の統合リスクや会計上の注意点を踏まえた慎重な進め方を明示しています。地理的には国際展開を続け、オフラインやインフルエンサーを活用したオムニチャネルのマーケティング拡大も検討中です。ただし、スキル型ゲームと運試し型ゲームを分ける各国の法規制や運営統合の難しさといったリスクを常に管理しています。

技術革新への取り組みでは、プラットフォーム基盤とデータサイエンスへの投資を継続するとともに、内部統制や財務プロセスの自動化にも資源を振り向けています。具体策として、会計分野の専門人材の採用や経理プロセスの再設計、内部監査コンサルの導入、さらに決算クローズ自動化ツール(BlackLine)の2024年Q4導入を計画しています。サイバーセキュリティや不正検知体制の強化も進めており、これらを通じて事業成長と規制・信認に耐えうる運営基盤を整備することを同社は目指しています。