Stitch Fix, Inc.SFIX

時価総額
$7.1億
PER
パーソナライズ衣料品の米国大手。AIとデータサイエンスで最適化するスタイリングボックスとFreestyleを展開。2024年8月期のアクティブ顧客が250.8万人、2024年に英国事業を停止。米国中心に展開。

事業内容

Stitch Fix, Inc.は、顧客の好みやデータを活用して個別に選んだ衣料品を届けるパーソナルスタイリング事業を中心に展開しています。同社は定期的にスタイリングされた商品を送る「Fix」と、顧客がいつでも購入できるオンライン商品一覧(Freestyle)を組み合わせたサービスを提供しています。

主要な顧客は自分に合った服の提案や手間の省略を求める消費者で、女性・男性・子供向けのアカウントを含みます。収益は主に商品販売に依存し、スタイリング料や配送料、プライベートブランドと他社ブランドの売上が柱であり、顧客の継続利用と1人当たりの売上が業績に直結しています。

同社はWomen’s、Petite、Maternity、Men’s、Plus、Kidsといったカテゴリでジーンズやワンピース、ブラウス、スカート、靴や小物まで幅広く取り扱っています。サードパーティブランドと自社のプライベートブランドを組み合わせ、プライベートブランドの方が利幅が高い傾向にあるため商品ミックスと在庫管理をデータ分析に基づいて最適化し、複数のフルフィルメント拠点で発送と返品処理を行っています。

経営方針

同社は「流動性を維持しつつ収益性を回復し、長期的な成長に戻す」ことを成長戦略の中核に据えています。具体的には、アクティブクライアント数を重要指標とし、2024会計年度のアクティブクライアントは約250.8万名(前年は312.1万名で前年比▲19.6%)でしたが、1人当たりの年間純収益は533ドルと前年から4.5%増加しており、顧客あたりの収益性改善を重視しています。営業キャッシュフローから設備投資を差し引いたフリーキャッシュフローは2024年度で約1,424万ドルにとどまる一方、広告費は2024年度111.4百万ドルであり、同社は広告費を売上高の約8〜9%に抑える見込みで、採算に見合う集客を重視した投資配分を目指しています。

重点投資分野はデータサイエンスと商品開発、在庫・物流の最適化です。具体的には顧客ごとの好みを機械学習で解析して商品推薦や仕入れを行うことで、返品率低下や客単価向上を狙っています。自社企画のプライベートブランドは一般にマージンが高く、同社はこの比率を高めることで差別化を図っています。また、在庫確保のために先行発注を行う一方で在庫リスクも抱えるため、約1.329億ドル(2024年8月時点)の法的な仕入れコミットメントを管理しつつ、商品ミックスで収益をつくる方針です。

新市場開拓と事業拡大については、グローバル展開の見直しを行い、英国事業は停止して事業構成を整理したうえで、米国内の主要カテゴリと新たな顧客層に集中しています。現在取り扱うカテゴリはウィメンズ、メンズ、キッズ、プラス、マタニティ、ペティート等で、価格帯や商品タイプの幅を広げることで既存顧客のエンゲージメントを高める施策を進めています。物流面では塩湖シティや一部のフルフィルメントセンターを閉鎖し、現在はアリゾナ、インディアナ、ジョージアの3拠点(総面積約2,114,000平方フィート)に集約して効率化を進め、不要スペースはサブリース(約1,012,000平方フィート)で調整しています。

技術革新への取り組みとして、同社はレコメンデーションや在庫予測に対するデータサイエンス投資を加速させています。社内のスタイリングや受注・倉庫管理のための独自アプリケーションを整備し、クラウド基盤や外部ベンダーと連携して顧客体験の向上と運用コスト削減を目指しています。加えてサイバーセキュリティの強化にも注力しており、最高情報セキュリティ責任者(CISO)が体制を監督、従業員向けの定期的な訓練・監視ツール・インシデント対応計画を整備してリスク管理を行っている点も特徴です。