RAYONIER INCRYN

時価総額
$4490万
PER
森林資産の長期運用を行うREITの大手。持続可能な伐採と炭素隔離、太陽光・CCSリースを展開。2024年に約7,141エーカーを2,275万ドルで買収、2023年11月に10億ドルの資産売却計画を発表。米国南部・太平洋岸北西部・ニュージーランドで展開。

事業内容

RAYONIER INCは主に広大な森林(ティンバーランド)を所有・管理し、木材の伐採と販売を中心に事業を展開する不動産投資信託です。同社は木材の丸太や製材向け原料を売るほか、土地の用途を転換した開発やレクリエーション用地の売却、太陽光や炭素貯留など土地を活用した新たな収益機会にも取り組んでいます。

同社の収益は継続的な木材収入が基盤で、伐採して販売する「デリバリーウッド」や地代的な契約(スタンページ)による入金が主流です。加えて土地の大規模売却や開発案件が年度によって収益に大きく寄与することがあり、輸出向けのログ取引や土地リース、炭素クレジットの売却など多様な収入源を持っています。

事業は地理的に南部(Floridaなど)、太平洋北西部、ニュージーランドの三つの木材セグメントに分かれ、ニュージーランド拠点ではログのトレーディングも行います。リアルエステート部門は農地・レクリエーション用地の高付加価値売却や、WildlightやHeartwoodなど特定開発プロジェクトでの用途変更・インフラ投資を進め、同時に土地を活用した太陽光や炭素回収、バイオエネルギー向け繊維供給などの新規収益化にも注力しています。

経営方針

同社は長期的な価値最大化を成長戦略の中心に据えています。具体的には、資本構成の見直しと資産売却によってレバレッジを抑制しつつ株主還元を強化する方針で、2023年11月に発表した選別的資産売却プランでは合計10億ドルの売却を目標としています。発表以降は約7.37億ドル相当の売却を完了し、ネット有利子負債/調整後EBITDAを目標の3.0倍以下に引き下げる取り組みで現時点では2.6倍を達成しています。財務基盤は投資適格格付け(S&P:BBB−、Moody’s:Baa3)を維持することを目指しており、流動性(現預金約3.23億ドル)やATM(最大3億ドル)などを活用して機動的な資本配分を行っています。

重点投資分野は高品質な林地の管理と差別化された不動産プラットフォームです。同社は約210万エーカーの樹園地を保有・運営し、木材の生物学的成長と収穫によるキャッシュフロー、環境保全の最適バランスで長期的な正味現在価値(NPV)を最大化することを目指しています。市場と地域ごとの需給分析、現地の立地生産性評価による選別的な買収・売却を通じて、キャッシュフローが高く成長見込みのある地域へポートフォリオを集中させる戦略をとっています。併せて、農村・レクリエーション用地の「最高・最良用途(HBU)」を見極めてプレミアム価格で売却する実績があり、南部林地の年間売却は概ね1〜2%程度を目安としています。

新市場の開拓では、低炭素経済への転換に対応した「ランドベースのソリューション」を拡大しています。具体的には、太陽光発電や二酸化炭素回収貯留(CCS)用のリース、樹木による炭素吸収を資産化するカーボンオフセット、そしてバイオエネルギー向け繊維供給などを想定し、立地・規模・地質などの条件を満たす用地で外部カウンターパーティーとリースや共同プロジェクトを進めています。既に太陽光やCCSのリース契約を有しており、追加的な資本投入をほとんど伴わない形で収益化する方針です。また、不動産開発ではWildlightとHeartwoodという米国南部の二つの主要プロジェクトを中心に開発パイプラインを保有し、成長市場での土地転換を通じた価値創出を目指しています。

技術革新と運営の強化にも注力しています。同社は持続可能な収穫量に基づく森林管理を実施し、年次の植生評価や在庫評価で収穫レベルを調整することにより安定したキャッシュフローを確保しています。加えて、サイバーセキュリティ分野では外部の24/7監視サービス、定期的な侵入テストやフィッシング訓練、日次バックアップなどの体制を整備し、従業員教育を毎月実施するなど運用の堅牢化を図っています。これらは森林資産の環境価値(炭素吸収や生態系サービス)を経済的価値に結びつける取り組みを後押しし、低炭素関連需要の拡大を技術的・運用的にサポートする施策です。