RYAN SPECIALTY HOLDINGS, INC.RYAN

時価総額
$150.4億
PER
専門保険の卸売仲介・委任引受の大手。E&Sやバインディングオーソリティ、MGAsを展開。プロデューサー700人超と30,000社の流通網、2024年に保険料の78%がE&S、2010年創業、米国・欧州中心に展開。

事業内容

RYAN SPECIALTY HOLDINGS, INC.は、複雑で引き受けが難しいリスク向けに特化した保険仲介と引受管理を行う企業で、流通(ホールセール仲介)、商品開発、引受、事務管理、リスク管理といった一連のサービスを提供しています。保険会社から委譲された権限でのプログラム運営や、小売仲介に対する配置支援を通じてオーダーメイドの保険ソリューションを作っています。

同社の主要な顧客は小売の保険仲介業者と保険会社で、約30,000の小売仲介事務所や多数のキャリアと取引しています。収益は主に保険料に対するコミッションと各種手数料で成り立っており、2024年は取扱保険料の大半をE&S(エクスセス&サープラス)市場で成立させています。

同社は事業をWholesale Brokerage、Binding Authority(権限委譲型引受)、Underwriting Managementといった専門分野に分けて運営しています。取り扱う商品は再生可能エネルギー、建設、サイバー、輸送、ビルダーズリスク、医療ストップロスや災害リスクの高い不動産など多岐にわたり、39のMGA/MGU(マネージング・ジェネラル・エージェント/アンダーライター)や全国プログラムを通じて専用商品を提供しています。

経営方針

同社は買収と有機的成長を組み合わせて規模拡大と収益性向上を目指しています。直近では2024年の有機的売上成長率が12.8%を記録しており、今後も戦略的買収と既存取引先との取引深化で成長を加速させる計画です。社内の生産性向上策として実施した「ACCELERATE 2025」プログラムでは、累計で1億0810万ドルの一時費用を計上し、2025年には年間約6000万ドルのコスト削減を見込んでいると公表しています。加えて、委任引受(保険会社からの権限委譲で保険を引き受ける事業)を重点分野と位置づけ、市場の拡大(AM Bestのデータで委任引受がE&S市場の約29%を占める点)を取り込むことを目指しています。

同社は人材と商品力への投資を差別化の核として重視しています。具体的には、700名超のプロデューサーと130拠点の営業ネットワークを通じて3万社以上の小売保険仲介事業者、350社以上の保険会社にアクセスしており、この規模を武器に複雑リスクの引受や商品開発を行っています。卸売仲介(Wholesale Brokerage)は2024年に14億8,910万ドルの手数料収入を上げ、同社の手数料収入の60.6%を占める中核事業です。小売仲介側とのチャネル競合を避ける方針や、標準外リスクに対する「オーダーメイド」の引受能力は、同社が顧客や再保険者から信頼を得る差別化要因となっています。

同社は海外・業態拡大を積極的に進めており、2024年はCastel(英国・欧州)、US Assure(米・フロリダ、ビルダーズリスク特化)、Greenhill、Ethos P&C、EverSports、Geo(オランダ)およびInnovisk(英国拠点のMGU群)など複数の買収を完了しました。これら2024年の買収で実質的に獲得した純資産の合計は約19.6億ドルに上り、買収後の期間において2024年に約1億280万ドルの売上を認識しています。さらに2025年2月にはVelocity(米・ナッシュビル、災害感受性の高い物件に特化したMGU)を取得しており、同社は買収を通じて人材、商品ライン、地理的な市場カバーを拡大することを目指しています(非米国売上は2024年に約5%に拡大)。

同社は技術とデータ活用によるサービス革新にも投資しています。年間で100万件超の契約データを基に価格設定モデルや引受助言の精緻化を進め、オペレーション効率化や新商品開発に結びつける方針です。また、AIや自動化技術の導入を検討・試験運用しつつ、サイバーセキュリティや倫理的運用リスクにも留意していると明示しています。加えて、拠点ごとの月次モニタリングや年度ごとの詳細予算策定など管理体制の強化も施策として継続しており、同社は技術投資と運営改善で長期的な競争優位と費用対効果の向上を目指しています。