RAYONIER ADVANCED MATERIALS INC.RYAM

時価総額
$3.8億
PER
セルロース系材料・紙パルプ製造の大手。高純度セルロースやセルロースナノクリスタル製品を展開。2024年12月末までにCNC開発ベンチャーへ1,200万ドル出資、2024年11月にバイオ素材会社へ€15百万の資金調達参加。米国・カナダ・フランス・英国・日本・中国で展開。

事業内容

RAYONIER ADVANCED MATERIALS INC.はパルプを原料に高付加価値のセルロース系素材を製造する企業です。主力製品は高純度セルロースやその派生品で、医薬品や化粧品、塗料・接着剤、電池材料など幅広い産業用途向けに供給しています。

同社の顧客は大手化学メーカーや化粧品・医薬メーカー、紙・段ボールメーカーなどの製造業者が中心で、製品販売が主な収益源になっています。北米・欧州・アジアを主要市場とし、長期供給契約や顧客ごとの技術支援によって売上の安定化を図っています。

事業は高純度セルロース、紙板向け製品、高歩留まりのパルプなど複数のセグメントで構成しています。さらにリグニン加工やセルロースのナノ化といったバイオマテリアル事業や共同事業への投資、研究開発にも力を入れて用途拡大を進めています。

経営方針

同社は安定したキャッシュ創出と成長分野への選択的投資によって企業価値向上を目指しています。伝統的な事業である高純度セルロース、紙板、高歩留パルプを基盤にしつつ、バイオマテリアルやセルロース由来の高付加価値製品へ注力することで中長期のトップライン成長を狙っています。財務面では2024年末時点で約7.3億ドルの有利子負債があり、2024年10月に設定した7億ドルの変動金利タームローンなどで借換えを実施し金利変動リスクに備えていますが、1%の金利変動で年間利息費用が約700万ドル動く想定であるため、キャッシュ配分は負債管理と成長投資のバランスで判断しています。株主還元方針では2018年に最大1億ドルの自社株買い枠を設定しており、2024年末時点で約6,000万ドル分が未使用です。

重点投資分野は「セルロースを基盤とする機能材料」とバイオマテリアル事業です。同社はセルロース特殊品(高純度セルロース)をコアに、化粧品や複合材料、インク・コーティングなど高付加価値用途に向けた材料開発を進めています。差別化の源泉は原料供給から加工技術、製品認証(例:ISCC等)に基づくサプライチェーン管理、そしてLignoTechやAnomeraといったジョイントベンチャーや出資先を通じた原料の垂直統合にあります。具体的には、Anomeraへこれまで約1,200万ドルを出資し、同社の持つ「セルロースナノクリスタル(CNC)」技術を活用して化粧品やコンクリート改質材など新用途の開拓を進めています。

新市場開拓と事業拡大の計画では、欧州でのバイオマテリアル展開に向けた子会社BioNovaの立ち上げと外部資金調達が挙げられます。2024年11月にSWEN社との株主契約により最大3,000万ユーロの出資枠が設定され、初回として1,500万ユーロが出資されるなどプロジェクト資金を確保しつつ、規制承認や現地での商業化を目指しています。製造拠点の強化も進めており、カナダのTemiscamingサイトでのAnomera向け生産設備整備や、グローバルな営業拠点網(米・加・仏・英・日・中)を活用して需要地域を広げる計画です。一方でバイオマテリアル拡大には規制取得や商業化リスクが伴う旨を同社も開示しており、段階的な投資と外部パートナーによる資金調達でリスクを抑制しています。

技術革新への取り組みとして、同社は研究開発プログラムを積極的に運営しています。同社は新製品や既存製品の新用途開発に向けたラボと生産連携を強化しており、AnomeraやLignoTechとの協働を通じてCNCや精製リグニンといった素材技術の商業化を目指しています。また、業務効率化や新製品開発で人工知能の活用を進める方針を示しており、サイバー攻撃の高度化を踏まえてAI駆動型の検知・対策ツールを導入するなど情報セキュリティ対策も強化中です。環境規制対応や温室効果ガス関連コストの上昇も見据えた設備投資やサプライチェーン対策を行い、安全面・人材面では約2,350人の従業員(約69%が労組所属)を対象に教育・安全プログラムを実施し、2024年には労働災害率を前年より30%低減するなど現場改善にも取り組んでいます。