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Reservoir Media, Inc.RSVR
事業内容
Reservoir Media, Inc.は音楽の著作権とマスター音源の取得・管理を主軸に事業を展開する企業です。同社は音楽出版と録音音楽の両面でカタログを保有し、ストリーミング配信や物理販売に加え、映画・テレビ・広告・ゲームなどへの使用(シンク)で収益を上げています。
主要な顧客はSpotifyやAppleなどのストリーミングサービス、放送局や広告主、映画・ゲーム制作会社、さらにフィットネスやソーシャルメディアなどのデジタルプラットフォームです。同社は継続的なロイヤリティ収入を基盤に、ライセンス料や配信・販売収入、前払金(アドバンス)や最低保証といった複数の収益源で収入を構成しており、シンク収入は近年の重要な成長項目の一つです。
事業は大きくMusic Publishing(音楽出版)とRecorded Music(録音音楽)の二本柱に分かれており、前者は作曲・作詞の著作権管理、後者はマスター音源の取得・再編集やレーベル運営を行っています。同社はChrysalisやTommy Boyなどのレーベル買収によるフロントラインの新譜リリースや、シンク専門チームと幅広い流通パートナー網を活用してカタログ価値の向上を図り、M&Aと新興市場への投資を成長戦略の中心に据えています。
経営方針
同社は買収を軸に規模拡大と収益成長を目指しています。これまでのM&A中心の成長戦略により、連結調整後EBITDAは前期比18%(増加額約1,010万ドル)と拡大しており、2025会計年度には投資活動による現金支出が約9,671万ドルに達しました。財務面ではシニア・クレジット・ファシリティを活用し借入残高は約3億8,800万ドル、利用可能枠は約5,817万ドルを確保しており、同社はこれらの資金と事業キャッシュフローで今後の買収や成長投資を賄う計画です。なお、JOBS法上の「新興成長企業」として、売上高が12.35億ドルに到達するか、あるいは時価総額が基準を超えるまで一定の開示上の猶予を利用しています。
同社は投資の重点を音楽カタログとフロントラインのアーティスト開発に置き、ここでの差別化を図ることを目指しています。具体的には全曲権利やマスター音源の取得、既存カタログの再パッケージ(リリース再編やボックスセット等)による収益化、さらにフロントライン・レーベル(Chrysalis、Tommy Boy、New Stateの買収実績)を通じた新曲の発掘・育成に投資しています。加えて、同期(映像や広告向けライセンス)が総売上の約13%を占めるなどライセンス収益の強化に注力し、クリエイター向けの制作支援やプロモーションで他社との差別化を図っています。
新市場の開拓では、デジタル領域と地域的成長市場の双方を追求しています。デジタル面ではフィットネスやソーシャルメディア、オンラインゲーム、音楽教育など新しい配信チャネルへのライセンス供与を拡大しており、PelotonやApple Fitness+など既存の事例に加え新規プラットフォーマーへの対応を進める計画です。地域面ではMENAやサブサハラ、インドといった高成長市場に注力し、PopArabia出資やUAE拠点の権利管理会社(ESMAA)を通じて現地アーティストやカタログ(例:Mohamed Ramadan、Nancy Ajram等)の獲得と管理を進め、IFPI報告のMENA+22.8%、サブサハラ+22.6%といった市場成長を取り込むことを目指しています。
技術革新については、配信・管理プラットフォームとセキュリティの強化で競争力を高めることを目指しています。ストリーミングやダウンロード配信のためのデジタル流通インフラを整備し、MERLINを含むデジタル権利ネットワークや主要配信サービス(Spotify、Apple、YouTube等)との連携を通じて収益化の効率を上げています。併せて情報システムとサイバーセキュリティ(技術担当副社長がCISOを兼務)に投資し、楽曲データの取り込みやロイヤリティ計算の自動化、内部統制の改善に取り組んでおり、これにより買収したカタログの迅速な組み込みと運用レバレッジの確保を図っています。