RedHill Biopharma Ltd.RDHL

時価総額
PER
消化器系・感染症・腫瘍領域に注力するバイオ医薬品の新興企業、2009年設立。GI関連製品Taliciaを米国で商業化、臨床段階の候補薬5本を保有。2023年2月にMovantikをHCRMに売却。米国中心に展開、UAEで2023年承認・2024年発売。

事業内容

RedHill Biopharma Ltd.は消化器(GI)、感染症、腫瘍領域に注力する専門バイオ医薬品企業です。同社は米国で消化器向けの処方薬Taliciaを販売するとともに、オパガニブやRHB-107など複数の臨床段階候補薬の開発を進めています。

収益は主に米国市場に依存しており、現時点ではTaliciaが主要な売上源です。同社は地域ごとに販売権をライセンスすることで前払い金やマイルストーン、ロイヤルティ収入を得る一方、臨床候補はまだ売上を生んでおらず売上先の集中度が高い(2024年は上位3社で約36%、22%、30%を占める)構造です。

同社は事業を「商業事業」と「研究開発」の二つのセグメントで運営しています。商業事業はTaliciaの販売やライセンス管理を担当し、研究開発は臨床試験の推進と外部からの導入候補の発掘・育成を行っています。戦略としては自社での販売とパートナーとのライセンス契約を使い分け、限られた資源でパイプラインの価値を高めることを目指しています。

経営方針

同社は胃腸(GI)、感染症、腫瘍領域に注力する「スペシャリティ・バイオファーマ」としての地位確立を目指しています。成長の核として、既に米国で商業化している製品Talicia®の拡大と、臨床開発段階にある計5件の治療候補の前進を掲げています。ただし財務面では課題があり、2024年末の現金残高は約480万ドル、同年の営業CFは約940万ドルのマイナスで、事業継続には追加資金の調達が不可欠です。短期的な対応策としては、2025年4月10日までにATM(市場での随時株式売出し)で約220万ドルを調達しており、ATM枠は総額で最大350万ドルまで設定されています。

同社が重点的に投資する分野は、既承認成分を改良して新たな適応や剤形で再承認を目指す戦略と臨床段階の新薬開発の二本柱です。改良型製剤を狙う理由は既存の安全性・有効性の知見を活用できるため開発期間やコストを圧縮できる点で、米国の505(b)(2)と呼ばれる効率的な承認経路を活用する方針を明確にしています。一方でオパガニブ(opaganib)やRHB-107(upamostat)など臨床段階の候補については、多様な適応(ウイルス感染、がん、代謝疾患など)を探索し、政府系助成や共同開発による資金・リスクの分散を積極的に図っています。

新市場開拓や事業拡大については、地域ごとにライセンスアウトと自社展開を使い分ける方針です。例としてRHB-102(Bekinda®)は北米を除く地域でHyloris社と独占ライセンス契約を締結しており、同社は前払金0.1万ドル、最大で6000万ドルのマイルストーンと売上に応じたロイヤルティ(最大で20%台半ば)を受ける条件を得ています。Talicia®についてもUAEでのライセンス契約により2024年8月に現地発売を実現しており、こうした地域別のライセンス戦略で短期収益と中長期のロイヤルティ収入の両立を図っています。

技術革新への取り組みは、既存薬の知見を活かした迅速な承認戦略と、臨床開発の質・効率を高める外部連携の強化に集約されています。同社は5件の治療候補を臨床開発で進めており、パンデミック対策を念頭に置いたウイルス治療の臨床試験で政府機関(NIHや国防省)からの支援を受けるなど公共セクターとの協業を進めてきました。ただし2025年1月30日にはRHB-107を含む一部試験で米国防省の資金提供が打ち切られ、患者登録停止など開発リスクが現実化している点は投資家が注視すべき事項です。加えて内部統制の強化や資金調達の確保といった経営基盤の改善も並行課題として取り組んでいます。