QuantumScape CorpQS

時価総額
$64.9億
PER
リチウム金属固体電池の新興企業。高エネルギー密度の固体電池技術と160超の米国特許を展開。フォルクスワーゲンとのライセンス移行、2023年8月の公募で3,750万株調達を実施。サンノゼ本社、従業員約800人(2024年12月31日時点)で米国中心に展開。

事業内容

QuantumScape Corpは次世代の固体電池を中心に開発する企業で、リチウム金属を使った電池の研究・試作を行っています。同社は既存の電池に比べて走行距離の延長や充電時間の短縮、安全性の向上を目指した製品化を進めています。

主要な顧客候補は自動車メーカーや一級部品サプライヤーで、将来的には電池の直販に加え、技術ライセンスやロイヤルティによる収益も想定しています。同社は現時点で事業からの売上はなく、開発と設備投資は主に株式による資金調達でまかなっています。

事業は大きく研究開発、パイロット生産、知的財産の管理・ライセンスの三つに分かれています。同社は電池セルやそれを組み合わせたモジュール、車載向けのパック設計などの開発に取り組み、量産化に向けた工程や自動車メーカーとの協業に注力しています。

経営方針

同社は製品の早期商業化と持続的な成長を目指しています。現時点でまだ売上は計上していないものの、自己資金による開発を継続しており、2023年8月の公募で約2.88億ドル、2024年のATM(随時売出し)で約1.285億ドルを調達しました。これらの資金と市場性のある有価証券の運用により、同社は少なくとも報告日から12か月分の運転資金を確保しており、現在の事業計画では資金が2028年後半まで持つ見込みです。将来的には自社で全ての生産を担うのではなく、技術ライセンスやパートナーとの協業で収益化することでスケールを図ることを目指しています。

同社は研究開発と知的財産への投資を重点に置いています。セパレータ(電池の中で電極を隔てる材料)やリチウム金属アノード、次世代の正極材料、セルやモジュール設計などに強みを持ち、米国で160件超、海外で190件超の特許・出願を保有しています。製造ノウハウは営業秘密として管理しつつ、サンノゼを中心に前段階の実証・試作設備を整備しています。人材面では2024年末時点で約800名を擁し、インセンティブとして2023年・2024年に合わせてそれぞれ約440万株、約420万株相当の業績連動型株式報酬(PSU)を付与するなど、開発達成に応じた報酬設計で技術と組織の両面を強化しています。なお、2025年1月には事業重点に合わせた人員調整として全社員の約7%を対象に削減を実施しています。

市場開拓と事業拡大は、資本集約を抑えるライセンス主体のモデルを軸に進めています。2024年7月にPowerCo(フォルクスワーゲングループ関連)との協業契約を発表し、従来の合弁から知的財産のライセンスへと移行することで当面の資本需要を大幅に低下させる見込みです。ライセンスの発効には開発マイルストーン達成が条件となっており、同社はこれらのマイルストーン達成を通じて初期のロイヤルティ収入獲得とパートナーの生産インフラを活用した市場投入を目指しています。一方で、政府規制や安全基準への適合、サプライチェーンの確保も同時に進め、OEMや一次サプライヤーとの交渉を加速しています。

技術革新への取り組みはマイルストーン管理と成果連動型インセンティブを組み合わせた形で進められています。経営陣への付与を含む「EPAプログラム」はトランシェごとに事業達成条件と株価目標(例:60ドル、120ドル、180ドル、240ドル、300ドル)を設定しており、特定の技術・事業成果が達成されたタイミングで報酬が解放される仕組みになっています。実務面では製品安全やサイバーセキュリティ、社内統制の整備にも力を入れており、外部監査人が2024年12月31日時点で内部統制に対して無資格意見を付与している点は投資家にとってのガバナンス強化の裏付けです。