QIAGEN N.V.QGEN

時価総額
PER
分子診断・ライフサイエンス向けのSample to Insightソリューションの最大手。NGSキット、デジタルPCR、検査自動化を展開。2023年にNGS系HID企業を1.495億ドルで買収、2022年に酵素製造社を6370万ドルで買収。米州・欧州・アジア中心に170カ国超で展開。

事業内容

QIAGEN N.V.は、分子診断とライフサイエンス向けの検査・分析ソリューションを開発・販売しています。同社は試料処理用の消耗品や検査用試薬、検査を自動化する装置、そしてデータ解析ソフトを組み合わせたワークフローを提供しています。

顧客は製薬・バイオ企業、病院や臨床検査室、大学や公的研究機関、法科学ラボなど多岐にわたり、用途も研究から診断まで幅広いです。同社の収益は日常的に消費される消耗品や試薬が柱で、機器販売やソフトのライセンス収入がこれを補完する構造になっています。

事業は「試料から解析まで」の一貫ソリューションを軸に展開しており、主な製品群は試料抽出キット、アッセイ、検査用装置、データ解析ソフトに分かれます。同社は自社装置に連動するアッセイの開発や、がん領域の精密診断、次世代シーケンス(NGS)やデジタルPCR向けの試薬開発に注力し、製品とサービスを組み合わせて顧客の継続利用を高める戦略を取っています。

経営方針

同社は持続的な売上成長と収益性の回復を両立させることを目指しています。過去数年で売上は2020年の18.7億ドルから2024年に19.8億ドルへと拡大しており、2024年は約85%を占める高い継続収益が安定性を支えています。営業利益率は2023年の20.9%から2024年に4.9%へ低下しましたが、同社は効率化プログラムとグローバルな事業見直しを進めつつ、営業活動によるキャッシュを2024年に6.74億ドルと大幅に改善させるなど、財務基盤の立て直しに注力しています。

同社は研究開発、製品開発、製造能力、顧客サポートへの重点投資を差別化の軸としています。具体的には、自動化プラットフォーム(例:症候群検査向けのQIAstat-Dxや、少量核酸を高感度で測るQIAcuityのようなデジタルPCR装置)や試薬・キットのメニュー拡大に資源を振り向け、装置販売が継続的な消耗品需要を生む「装置+消耗品」のビジネスモデルを強化しています。従業員構成では約18%が研究開発に従事しており、知的財産やソフトウェア、製造設備への投資も積極的です。

同社は事業拡大をM&Aと市場開拓の両輪で進めており、2022年のBLIRT、2023年のVerogenなど戦略的買収を通じて製品ラインや市場を補完しています。今後も「Sample to Insight」の方針に沿う買収を継続する方針である一方、買収の統合や規制対応、現地事情への適応に資源を割く必要があるため、組織や財務管理の強化を並行して進めています。また、中東やアジアなど成長が期待される地域の展開、不足する市場チャネルのデジタル化(My QIAGENによる顧客ポータルやGeneGlobeハブの拡充)によって販路と顧客接点の拡大を図っています。

技術革新では、予防検診やがんの精密診断、コンパニオン診断向けのアッセイ群、次世代シーケンス(NGS)用キットの開発を重点に据えています。イルミナとの体外診断(IVD)での協業や、QIAcuity向けの用途拡大、AIを活用したバイオインフォマティクスとクラウド解析の統合により、生データを臨床や研究に活かす「洞察」を提供する取り組みを強めています。これらは承認や市場採用のタイミングに左右されるためリスク管理も重要ですが、同社はプラットフォームとコンテンツの両面で差別化を図り、長期的な成長を目指しています。