QDM International Inc.QDMI

時価総額
$114.6億
PER
保険仲介業の新興企業。個人向け生命・医療保険と一般保険、MPF仲介サービスを展開。2024年3月期に総手数料の約96.5%が単一保険会社由来、2020年10月21日の株式交換でBVI子会社を取得、2021年11月3日にソフトウェア子会社を100%買収。香港・中国本土中心に展開。

事業内容

QDM International Inc.はフロリダに登記された持株会社で、主に香港の子会社を通じて保険仲介事業を展開しています。同社は個人向けの生命保険・医療保険や自動車や住宅といった一般損害保険を販売し、MPF(香港の強制積立年金)やORSO(企業年金に相当する制度)の口座開設支援など退職金関連の仲介サービスも行っています。

主な顧客は香港および中国本土の個人で、収益の大部分を保険料に対する販売手数料(コミッション)が占めています。同社の収益構造は保険会社パートナーへの依存度が高く、直近の会計年度では単一の保険会社からの手数料が総手数料の約96.5%を占めるなど、供給側の集中リスクが顕著です。

事業セグメントは大きくライフ・医療保険、一般損害保険、退職金仲介、そして近年のソフトウェア事業へと分かれています。ライフ系では個人向けの医療保険や終身・養老・年金商品に注力し、一般損害保険では自動車、商業財産、賠償、旅行、傷害などを扱っています。加えて、2021年に取得したソフトウェア関連の子会社により販売・管理のデジタル化を進め、顧客接点の強化と業務効率化を図っています。

経営方針

同社は収益基盤の拡大と事業の多角化を目指しています。実績としては、2024会計年度の売上高が約$6.37百万と前年の$1.13百万から約461.8%増加し、当期純利益は$1.56百万となりました。資金面では2023年3月の公募で289,104,000株を1株当たり$0.081で発行し、粗収入で約$2.34百万を調達しており、2024年3月31日時点の現金は約$5.16百万と報告されています。また流動性向上のため2024年4月に1株を10株にするフォワード・ストック・スプリットを実施し、発行済み普通株数を29,156,393株相当から291,563,930株相当へと拡大しました。

同社は重点的にYeeTahを通じた香港市場での保険仲介事業に投資しており、個人の生命・医療保険を中心に、一般保険やMPF(年金)仲介サービスも提供しています。顧客体験の向上を差別化の核と位置づけ、対面相談や店舗での契約手続きに依拠するビジネスモデルを維持しています。販売チャネル強化の具体策としては技術担当代表(テクニカルレプレゼンタティブ)の採用・育成に注力しており、2024年3月31日時点で11名の代表が在籍しています。一方で収入の供給元が偏在しており、2024年度の手数料収入の約96.5%が主要保険会社1社に依存している点を認識しており、これを踏まえたチャネル多様化が投資の焦点です。

新市場開拓と事業拡大では、中国本土からの顧客取り込みを短期的な成長機会と見ており、COVID-19に伴う渡航制限解除が売上回復の主因になっています。事業モデルの多様化策として2023年12月に香港の信託会社と紹介業務の提携を開始し、当社顧客を同社に紹介して紹介先で発生する投資収益の一部を受け取る仕組みを導入しました(2024年報告時点ではまだ収益は発生していません)。また資本政策面では普通株の認可株式数を2億株から7億株、優先株を5百万株から3千万株へ引き上げており、将来の資金調達やM&Aに備えた余地を確保しています。

技術革新への取り組みについては、以前に顧客関係管理(CRM)型のSaaS提供を目的とした子会社QDMSを取得した経緯があるものの、2023年10月にQDMSを売却し自社でSaaS事業を推進する計画は断念しました。したがって現時点では自前のソフトウェア開発による差別化よりも、信託会社など外部パートナーとの連携によるサービス拡充や業務プロセスの改善に重点を置いています。ただし、同社は内部統制面で「職務分掌や書面化の不備、独立取締役および監査委員会の欠如」といった重大な弱点を開示しており、これらの改善が技術投資や事業拡大を安定的に支える上での優先課題となります。