- 米国企業
- PTC THERAPEUTICS, INC.
PTC THERAPEUTICS, INC.PTCT
事業内容
PTC Therapeutics, Inc.は希少疾患向けの医薬品を発見・開発・販売するグローバルなバイオ医薬企業です。同社は神経や代謝に関わる希少疾患を中心に、既に市販している治療薬と臨床段階の候補薬を持ち、患者に新たな治療選択肢を提供しています。製品ポートフォリオには既存薬の商業化に加えて、遺伝子治療や小分子薬の開発もあります。
同社の主要な顧客は病院や専門クリニック、専門薬局、保険者(公的および民間)や患者団体で、処方薬の販売を通じて売上を上げています。加えて、共同開発やライセンス契約からのマイルストーンやロイヤルティ、研究助成金や契約研究による収入も重要な構成要素です。医薬品の価格設定や保険償還の可否が収益に大きく影響します。
同社は単一の事業セグメント(ライフサイエンス)で事業を展開し、商用製品ラインと研究開発パイプラインを両輪で運営しています。具体的には、既存の希少疾患治療薬の販売を行う一方で、フェニルケトン尿症などの代謝・神経領域や遺伝子治療候補など複数の開発プログラムを進めています。製造や臨床試験は外部の専門企業に委託し、国内外のパートナーと協業して市場投入や承認取得を目指しています。
経営方針
同社は希少疾患領域での事業拡大を通じて成長を図ることを目指しています。具体的には既存の製品群(Translarnaは2014年以降、Emflazaは2017年以降、Upstazaは2022年5月以降に販売)からの売上や、ノバルティスやロシュとの共同開発・ロイヤルティ収入を柱にしながら、臨床段階の資産を商業化して収益性の改善を目指しています。一方で2024年末時点で累積欠損は約36.5億ドルに上り、同社は2025年も引き続き営業損失を見込んでいるため、現金・市場性証券と製品売上、提携収入によって少なくとも今後12カ月の資金需要は賄えるとしています。
同社は重点的に後期開発段階のプログラムに投資する戦略を取っており、臨床データで差別化することを目指しています。例えば、フェレイチン病(Friedreich’s ataxia)に対するvatiquinoneについては2024年12月に米国で承認申請(NDA)を行い、FDAは優先審査を受理して審査期限を2025年8月19日と設定しています。フェニルケトン尿症(PKU)向けのsepiapterinは第3相試験の登録を完了しており、2024年にブラジルと日本へ申請を行い、日本の判断は2025年第4四半期を見込んでいます。これらを通じて臨床データとリアルワールドの登録研究を組み合わせ、規制当局や支払側に対する有効性・価値の提示で差別化を図っています。
同社は新市場開拓と事業拡大を積極的に推し進めることを目指しています。欧州でのTranslarnaの条件付承認の維持や更新に関する不確実性があるものの、地域ごとに直接販売体制を整える一方で、直接展開しない地域では第三者との販売・流通提携で販路を広げる計画です。過去の事業拡大には企業買収や資産取得を活用しており、Censa関連で2023年に開発マイルストーンとして3,000万ドルを現物と現金で支払うなどの取引実績があります。資金面では2024年末時点で公募枠等で最大約9,300万ドルの発行枠を保有し、ブラックストーン関連の株式購入で約5,000万ドル規模の調達実績やロイヤルティ売却など多様な資金調達手段を維持しています。
同社は技術革新に対しては選択と集中で取り組むことを目指しています。スプライシングや炎症、鉄依存性細胞死(フェロプトーシス)など複数の研究領域に投資しつつ、2023年には遺伝子治療の一部前臨床プログラムを中止するなど、資源を臨床的により実現可能性の高い領域へ再配分しました。承認後の追加試験や品質管理(製造・組成管理)の整備、知財保護や市販後の安全性対応にも注力しており、臨床試験データと実臨床データの両輪で製品価値を高める戦略をとっています。