- 米国企業
- PURE CYCLE CORP
PURE CYCLE CORPPCYO
事業内容
PURE CYCLE CORPは、米コロラド州フロントレンジ地域で水道・下水サービスの運営、土地のマスタープラン開発、一戸建て賃貸住宅の事業を展開する企業です。同社はデンバー都市圏で卸売の水供給と下水処理のインフラを運営するとともに、自社保有地を住宅や商業用地として造成しています。
主要な顧客は家庭用・商業用・産業用の水需要者や地元の住宅建設業者、賃貸の入居者で、収益構造は水道・下水の利用料による定期的な月次収入、区画や土地の売却収入、そして賃貸住宅の家賃収入の三本柱で成り立っています。同社は長年にわたって蓄積した水権とインフラを活かして安定した収益基盤を築いています。
事業は水・下水サービス、土地開発、単身世帯向け一戸建て賃貸の三つのセグメントに分かれて運営されています。同社の水事業は取水、貯水、処理、配水のネットワークを運用して卸売顧客に供給し、土地開発ではSky Ranchなどで数千戸規模の住宅地や商業・工業用地を段階的に造成しています。賃貸事業では自社で造成した区画に一戸建てを建て年間契約で貸し出し、現在の保有戸数を増やして将来的に数百戸規模への拡大を目指しています。
経営方針
同社は中期的に「土地開発と水道サービスを組み合わせた統合事業で安定した収益成長を図る」ことを成長戦略の柱としています。財務的には自己資本や現金を厚く保つ方針で、2024年8月31日時点の運転資本は約28.5百万ドル、現金同等物は約22.1百万ドルと報告しており、2024会計年度は純利益が約11.6百万ドル、希薄化後1株当たり利益が0.48ドルでした。株主還元では取締役会裁量に基づく配当方針を維持しつつ、普通株の配当はシリーズB優先株の条件(Export Water売却の収入が36,026,232ドルを超えることなど)が満たされるまで行わない仕組みです。また、株式買戻しプログラムを公表しており最大200,000株を上限に段階的な自己株買いを進めています(2024年8月31日時点で59,926株、2024年11月11日時点で69,926株を取得)。
重点投資分野は明確に水・下水道資産の拡充と主要土地開発プロジェクト(Sky Ranch)の推進、さらに単身家庭向け賃貸事業の拡大に振り分けられています。差別化の核は水権と土地を同時に保有・開発できる「垂直統合」で、飲料水・灌漑水・下水の供給インフラを自社で整備することで工期の短縮やコスト抑制を図り、造成地の段階的引渡しとビルダーの引き取りスケジュールを合わせて過剰設備を避ける具体策を取っています。Sky Ranchは最大で3,200戸相当の開発が許可されており、同社は入居用に自社保有の賃貸住宅を増やす計画で、現時点の14戸から今後数年で200戸超の保有を視野に入れています。
新市場開拓と事業拡大では、近年の用水権と土地の取得が中心的施策です。2024年10月にはWeld Countyの約432エーカーの土地と合わせて灌漑用水や地下水権を約5.4百万ドルで取得し、これをLost CreekとRangeviewの水供給網に統合してRangeview地区の顧客への供給範囲を拡大する計画です。パブリックファイナンスも活用しており、Sky Ranch地区の自治体債発行により同社は約10.1百万ドルの補填を受けるなど、公共と連携したインフラ整備で土地造成と上下水道サービスの同時展開を進めています。加えて水の卸売販売先を多角化しており、油・ガス業界向けの販売増加も2024年の売上拡大に寄与しました。
技術革新への取り組みは主に運用効率化と情報の保護に向けられています。同社は情報セキュリティ対策として外部専門家の活用、定期的な脆弱性診断、従業員向けの訓練や事前の対応訓練を実施しており、IT・通信・セキュリティ関連の専門費用を増やして体制強化を図っています。上下水道の運用面では、許認可順守のためのモニタリング体制や資産の保守計画を整備し、建設については固定価格契約や第三者施工を組み合わせてコスト変動リスクを管理する具体的施策を講じています。以上により、同社は地域の水需要と住宅需要を結びつけた長期的な収益基盤の構築を目指しています。