Ovid Therapeutics Inc.OVID

時価総額
$1.1億
PER
脳疾患治療薬の新興企業。薬剤開発を展開。2021年12月のアストラゼネカ契約で$5.0M前払と最大$203Mのマイルストーン、2022年8月のGensaicへ$5.1M出資。米国拠点、米欧中心の展開。

事業内容

Ovid Therapeutics Inc.は、てんかんや神経発達・精神・神経変性疾患など、脳の未充足な医療ニーズに応える小分子薬の研究開発を行う臨床段階のバイオ企業です。同社は既知の生物学的根拠に基づいて候補化合物を選び、バイオマーカーや明確な臨床評価尺度を用いて早期の有効性証明(POC)を目指す治療薬開発を進めています。

同社は現時点で商用化された製品を持たないため、主な収益源はライセンス契約や共同研究による前払金、マイルストーン支払いや将来のロイヤルティ、投資家からの資金調達に依存しています。同社は大手製薬との独占ライセンスや共同開発契約、外部企業へのサブライセンスなどで資金と開発リスクの分散を図っています。

事業面では複数のプログラムを抱え、例えばOV101の特許ポートフォリオやAstraZenecaから導入したKCC2標的のリード候補OV350、さらにGensaicとの共同開発オプションなどが中核パイプラインです。同社は希少で難治性の「先導」適応症で早期の臨床的信頼性を得たうえで、非中核適応や地域での権利拡大をパートナーと進める戦略をとり、事業開発と社内外の研究連携を両輪に成長を図っています。

経営方針

同社は成長戦略として、臨床パイプラインの着実な前進と資金効率の両立を目指しています。具体的には、2024年12月31日時点で現金・現金同等物および有価証券が5,310万ドルあり、現行の計画で2026年下半期までの資金繰り(キャッシュランウェイ)を確保しているとしています。資金調達面ではS-3登録により最大2.5億ドルの発行枠(うち随時売出しプログラムで7,500万ドル)を持つ一方で、公募可能額には公開フロートが75百万ドル未満である制約があり、ナスダックの最低株価要件に関する是正期限(2025年8月11日)など上場維持に向けた課題も認識しています。利益還元は当面行わず、開発投資と提携での資金確保を優先する方針です。

同社は重点投資分野として中枢神経領域、特に発作や精神症状といった神経興奮の症状に注力しており、OV350、OV888(GV101)、OV329などの開発を進めています。差別化戦略としては、希少かつ治療抵抗性の「センチネル」適応で早期の概念実証を目指すこと、バイオマーカーを早期から組み込んで用量と作用の検証を行うこと、遺伝学や人工知能を活用した予測モデルで前臨床から臨床への翻訳を効率化することを掲げています。こうした科学に基づく開発手法と、過去に重要な神経領域薬の開発やライセンシング実績がある経営陣のネットワークを組み合わせることで、競合との差別化を図っています。

事業拡大の計画として、同社は非中核の適応や米国外の地域権利について外部パートナーと協業する方針を示しています。具体的にはアストラゼネカからのKCC2関連候補のライセンス取得(契約時に現金500万ドルと株式約730万ドル相当の支払、最大2.03億ドルのマイルストーン)や、Gensaicへの投資(510万ドル)と共同研究・オプション契約など、外部資産の取り込みと共同開発を推進しています。将来的にはライセンスアウトや共同販売を通じた地域展開、ロイヤリティやマイルストーンによる収益化を目指しています。

技術革新への取り組みでは、同社はバイオマーカー戦略と臨床に直結する明確な評価尺度を早期から導入することを目指しています。前臨床段階では遺伝学的知見やAIを用いた予測モデルで適応選定の精度を高め、臨床では「有意義なエンドポイント」を重視して短期間かつ費用効率の高い試験デザインを採用しています。社内の運営面でもサイバーセキュリティ対策や内部統制の強化に取り組んでおり、インシデント対応方針の整備や暗号化、外部専門家との連携、財務部門におけるサイバーリスク対応人材の採用などを実施している点も特徴です。