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OWENS & MINOR INCOMI
事業内容
Owens & Minor, Inc.は米国を拠点とする総合的な医療ソリューション企業で、医療用品の製造・物流と在宅医療サービスを主力に展開しています。同社は病院向けの手術用滅菌材料や保護衣、検査用手袋などの製造・供給と、大規模な流通ネットワークを通じた調達・配送を行っています。
主要顧客は多施設を持つ病院ネットワークや独立病院、手術センター、医師の診療所、そしてグループ購買組織(GPO)で、GPO経由や直接契約での取引が収益の中心になっています。同社の収益モデルは、仕入れ価格に一定のマークアップを加える流通手数料型やサービス料型が基本で、在宅向け事業では保険者や公的医療制度からのフィー・フォー・サービスや包括的支払い(キャピテーション)も重要な収入源です。2024年はVizient、Premier、HealthTrustといった大手GPOへの売上が大きな割合を占めました。
事業は大きくProducts & Healthcare ServicesとPatient Directの二本柱で構成され、前者は自社ブランドの製造(滅菌包装、手術用資材、保護具など)と全国規模の物流・在庫管理を担います。同社は米国やタイ、ホンジュラス、メキシコ、アイルランドに製造拠点を持ち、後者のPatient Directは在宅用酸素や非侵襲的換気、睡眠時無呼吸治療機器、糖尿病ケア、創傷・ストーマ・失禁関連など幅広い在宅医療機器と消耗品を、全国300以上の拠点と専用薬局で配送・臨床支援し迅速なサービスを提供しています。
経営方針
同社は総合的な成長を目指しており、直近では2024年に連結売上高を107.0億ドルに拡大し、前年から約3.6%の増収を達成しました。事業別では製品・医療サービスが80.2億ドル(同3.1%増)、患者向け事業(Patient Direct)が26.8億ドル(同5.0%増)と、特に在宅医療関連の需要が成長を牽引しています。財務面では約19億ドルの有利子負債を抱えつつ借入契約の比率や金利ヘッジを管理しており、運転資本と在庫管理を最適化することで利益率(2024年の売上総利益率は約20.74%)の維持・改善を図っています。また、同社は事業ポートフォリオの最適化を検討しており、製品・医療サービス部門の売却検討やRotechの買収といった戦略的選択肢も並行して検討していますが、これらには統合や規制のリスクがある点も明示しています。
同社は重点的に在宅医療ネットワークとディストリビューション基盤へ投資することで差別化を図っています。Patient Directは全米で300以上の拠点と郵送対応拠点を持ち、糖尿病関連、呼吸療法、睡眠療法など複数カテゴリで伸長しており、これが5%の売上成長に寄与しました。製造・調達面では米国、タイ、ホンジュラス、メキシコ、アイルランドの拠点を活用し、主原材料であるポリプロピレンやニトリルの価格変動に対してはサプライヤーとの協働や調達改革で対応、グローバル製品部門では調達施策で年間約1,500万ドルのコスト削減を実現しています。加えて、同社は主要顧客であるVizient、Premier、HealthTrustといった調達組織向けの契約を通じて大口顧客を確保し、サービス提供とコスト管理で差別化を行っています。
新市場開拓や事業拡大は買収とオーガニック成長の両軸で進められています。過去のApria買収に続きRotech買収を通じて在宅医療事業の規模拡大を図る一方で、製品・医療サービス部門の売却検討も進めており、ポートフォリオを再編して高成長・高付加価値領域に経営資源を集中する可能性があります。こうしたM&Aや統合は売上拡大とシナジー獲得の手段ですが、統合コストや顧客・従業員の流出、規制対応といった具体的リスクが存在するため、同社は統合計画・財務シミュレーション・コンプライアンス体制を慎重に進める方針です。なお、患者向け事業の比率拡大は、メディケアや民間保険といった支払者との契約や入札プロセスの管理が重要になるため、同社は取引先との関係強化を重視しています。
技術革新には継続的に投資しており、研究開発費は2024年に1,300万ドル、情報技術(IT)関連の戦略投資からは年間で約1,800万ドルのコスト削減効果が確認されています。物流面では倉庫管理、需要予測、データウェアハウス、電子商取引の強化により納品精度と在庫回転を改善し、低単位ピッキングや音声ピッキングなどの自動化技術を導入しています。金融リスク管理では為替フォワードやスワップ、金利スワップを限定的に用い、2024年末時点で為替の名目契約額は約4,300万ドルとしていますが、原材料のコモディティリスクは完全にはヘッジできないため、調達多様化と製品ミックス改善でリスク軽減を図っています。以上により、同社は供給網の効率化とデジタル化で競争力を高め、在宅医療と高付加価値製品に資源を集中する経営戦略を推進しています。