OLIN CorpOLN

時価総額
$21.2億
PER
塩素アルカリ、エポキシ樹脂、スポーティング弾を手掛ける化学・弾薬メーカーで、塩素アルカリは世界最大手、弾薬は米国大手。塩素、苛性ソーダ、エポキシ樹脂、スポーティング小口径弾を展開。2023年10月にクレー用ターゲット企業を6350万ドルで買収。北米・西欧中心に展開。

事業内容

OLIN Corpは化学製品の製造・販売を一貫して行うグローバル企業であり、米国でも有数の弾薬メーカーです。同社は塩素アルカリ製品やエポキシ樹脂、スポーツ用・小口径の弾薬を主力に製造・販売しています。

同社の収益は主に製品の製造と出荷から得ており、顧客へ直接販売することが中心で一部は卸や販売代理を通します。顧客は産業用途のメーカー、建設・塗料関連、インフラや水処理、量販店や小売、射撃関連の販売網に加えて米政府やその下請け企業も含み、2024年の政府向け売上は約11%でした。

同社は事業を塩素アルカリ・ビニル事業、エポキシ事業、ウィンチェスター(弾薬)事業の三つに分けて運営しています。塩素アルカリ・ビニルでは塩素や苛性ソーダ、塩化ビニルの原料などの基礎化学品を、エポキシ事業では樹脂原料や液状・固形のエポキシ樹脂と配合製品を、ウィンチェスター事業ではスポーツ弾や軍用小口径弾、再装填部品やクレー用ターゲットなどを製造しています。いずれの事業も設備投資が大きく、自社内で原料を統合することでコスト競争力を高める構造を持っています。

経営方針

同社は中長期での安定成長と株主還元の両立を目指しています。成長は既存事業の深耕と選択的な買収・合弁を組み合わせて進める方針で、株主還元では2024年12月11日に取締役会が13億ドルの自社株買い枠を承認しており(2022年の20億ドル枠と併存)、2024年の買戻し実績は590万株・約3.003億ドル、累積で約1,301.1百万ドル、2,510万株の取得・償却を行っています。一方で負債は資本の約58%を占め長期借入金は約28.4億ドルと規模が大きく、金利感応度としてSOFRが1%変動すると年間利息費用が約1,060万ドル変動する試算が示されているため、資金調達と負債管理を両立させながら成長投資を行う姿勢です。

投資の重点分野は塩素・苛性ソーダなどのクロールアルカリ、エポキシ原料・製品、及びウィンチェスターの弾薬部門で、同社は原料から最終品まで一貫生産する垂直統合を差別化の中核としています。特にエポキシは自社でフェノールやアセトンなどの芳香族原料を持つことでコスト優位を築き、液状・固形樹脂を変換して高付加価値の製品(顧客別の配合品)にすることで利幅を高めています。研究開発費は2024年に約1,840万ドルを計上しており、生産設備の効率化や顧客向けの製品改良を通じて市場での競争力を確保する方針です。

新市場開拓と事業拡大では、買収と合弁が重要な手段です。直近では2023年10月にWhite Flyer社資産を約6,350万ドルで取得し、2025年1月にはAMMO, Inc.の小口弾薬製造資産を約7,500万ドルで取得する合意を発表しており(2025年上期の完了見込み)、真鍮ケース生産能力や製造面積の拡大でウィンチェスターの受注残(2025年1月31日時点で約14.26億ドル、うち約70%が2025年内に履行見込み)に対応します。また、三井と51/49で設立した合弁(Blue Water Alliance)など、取引や需給の効率化を図る合弁にも注力しますが、買収統合や規制承認のリスクを明示している点は投資家が留意すべき事項です。

技術革新と運用改善では、製品革新に加え安全・環境対応とデジタル化を組み合わせた取り組みを進めています。エポキシ製品は風力や電気絶縁材など温室効果ガス低減に資する用途への供給を強化しており、サイバーリスク対策は最高情報責任者(CIO)を中心に全社のリスク管理枠組みに組み込まれています。加えて生産体制の最適化として、2024年にはFreeportのある塩素工場閉鎖を決定し、2030年までに約3,500万ドルの追加リストラ費用を見込むなど資産配置の見直しを進め、技術投資・設備入れ替えと人材育成(同社の「Lifting People」施策)で長期的な収益性向上を図っています。