Oklo Inc.OKLO

時価総額
$113.2億
PER
小型高速原子炉の新興企業。Auroraパワーハウスを展開。2024年5月のSPAC合併で276.2百万ドルを調達、2024年5月10日にNYSE上場、放射性同位体生産企業を買収、従業員数113名(2024年12月末)。米国中心の展開。

事業内容

Oklo Inc.は、小型の高度な原子炉を使って電力と産業用の熱を供給することを目指す企業です。同社は「Aurora」と呼ぶ発電ユニットを開発しており、新しい燃料やリサイクル燃料を活用してクリーンで安定した電力を低コストで提供することを目標としています。

主要な顧客は電力会社や工場、データセンター、政府・公共部門など大口の電力・熱需要者で、収益は長期の電力購入契約や前払金、設置・運用に伴うサービス料を軸に想定しています。同社はマスターパワー契約や意向表明(LOI)などで顧客と交渉することが多く、これらが確定契約に移行するかどうかで売上や稼働スケジュールが左右されます。

事業は大きく原子炉の設計・許認可・建設・運用、燃料供給とリサイクル、運用・保守などのサービスに分かれます。同社は放射性同位体の生産など関連領域の拡大も進めており、規制対応や資金調達、顧客との長期契約の確保が商業化と成長の鍵になります。

経営方針

同社はAuroraと呼ぶ小型高速炉「パワーハウス」の商業化を軸に成長を目指しています。具体的には、まず最初の機体を開発・認可・量産化して商用電力と熱を販売することで収益化を図る計画です。2024年末時点で現金・現金同等物・有価証券は約2億7,530万ドルあり、この資金を開発、許認可手続き(COLAの取得を含む)、製造準備・試験に充てるとしています。ただし同社は実際の商業収入はAuroraの完成と認可が済むまで見込めないと明言しており、既に純損失や営業損失が発生しているため、追加の資金調達が必要になる見込みです。

同社は研究開発、燃料サイクル、製造能力、規制対応に重点投資しています。差別化点としては、金属燃料を用いた高速炉という設計で「新燃料(fresh)」だけでなく再処理燃料も利用可能にする点、データセンターなど需要が急増している用途向けに安定したベースロード電力と熱を同時に提供できる点を掲げています。2024年には放射性同位体製造の専門企業(Atomic Alchemy)を統合しており、燃料や同位体の供給チェーンを垂直統合することで競合との差別化を図る具体策を進めています。

新市場開拓と事業拡大については、AIやクラウドの普及で電力需要が拡大しているデータセンター市場を重点ターゲットに設定しています。顧客との覚書やLOI、マスター契約を通じて需要の実需化を目指し、電力販売では長期の電力購入契約(PPA)獲得を狙います。同時に製造拠点や燃料加工・リサイクル設備の整備、人材増強や業務システムの強化を進める計画で、2024年末時点で従業員は約113名と技術系人材が厚い体制を取っています。ただし、規制やサプライチェーン上の制約を踏まえ、計画通り進めるための資金と時間の確保を明確に意識しています。

技術革新への取り組みとしては、Auroraの核技術と燃料技術の継続的な改良、製造プロセスの実地試験、燃料再処理や高濃度低濃縮ウラン(HALEU)への対応といった技術基盤の構築に注力しています。技術開発は社内の研究開発だけでなく外部の専門企業や規制機関との協働を通じて進め、製造試験や長期運転性の検証を段階的に実施する方針です。加えて、上場企業としての内部管理体制の強化(第三者専門家の採用や会計・統制プロセスの改善)も進め、技術革新を安全かつ実行可能な事業化につなげる体制作りを進めています。