Orion S.A.OEC

時価総額
$2.4億
PER
カーボンブラック製造の最大手。ポリマー・電池向け導電性グレードとタイヤ補強用ラバーグレードを展開。2024年にフランスのタイヤリサイクル企業へ出資し長期供給契約を締結。欧州・北米・南米・アジアで展開。

事業内容

Orion S.A.は世界有数のカーボンブラック製造企業で、粉末状のカーボンブラックをポリマーや電池、印刷インク、塗料向けのスペシャリティ製品と、タイヤや各種ゴム用途向けのラバー製品に分けて生産しています。同社は粒子や表面特性を設計して顧客の製品性能を高めることを主力としています。

同社の主要顧客は自動車タイヤメーカーやゴム加工業者、プラスチックや電池、塗料・印刷分野の大手メーカーで、大口顧客との長期取引を通じて収益を得ています。収益構造はラバー部門の比重が大きく、上位顧客への依存度が高い点が特徴で、上位10社で販売量の約半分を占めています。

事業は「スペシャリティカーボンブラック」と「ラバーカーボンブラック」の二つの報告セグメントに分かれており、スペシャリティは導電性や高純度、塗装・印刷向けの後処理品など多様なグレードを揃え、ラバーはタイヤ補強向けのグレードを中心に展開しています。同社は欧米やアジアに研究・技術拠点と生産設備を持ち、顧客との共同開発や製造プロセス改善で製品の差別化と競争力強化を図っています。

経営方針

同社は中長期で収益性と株主還元の両立を目指しています。直近の実績では2024年の売上高は約18.8億ドル、調整後EBITDAは3.022億ドル、純利益は4420万ドルとなっており、これらの水準を基に調整後EBITDAの改善やマージンの回復を狙っています。財務面では2024年末の総負債が約9.09億ドルである一方、取締役会は既存のキャッシュ創出力や借入余力を活用して設備投資を賄う方針を示しており、株主還元策としては2027年6月までに最大約690万株を取得できる自社株買い枠を設定している点も注目されます。

重点投資分野は製品の上流(原料・製造)と下流(顧客向けの用途開発)の双方にあります。同社はSpecialty(特殊用途)とRubber(タイヤ・ゴム向け)の二部門で事業を展開しており、2024年はSpecialtyが売上の約34.4%・調整後EBITDAの約35.8%を占め、Rubberが売上の約65.6%・調整後EBITDAの約64.2%を占めました。差別化策としては、粒径や表面化学を制御した高付加価値グレードの開発、用途ごとの性能要件に合わせた技術サポート、特許・商標による知財管理を通じて顧客の切り替えコストを高める取り組みを進めています。

新市場開拓と事業拡大では、北米のLa Porte(テキサス)に建設中の生産設備や、既存の14拠点およびドルトムントの合弁を通じた生産ネットワーク拡大が中心です。サーキュラー(循環型)戦略の一環としては、フランスのタイヤリサイクル企業Alpha Carbone(AC)への出資と長期供給契約によりタイヤのパイロリシス油を確保し、その油を原料に回収カーボンブラックを製造・供給する計画を進めています。同社は2024年に約0.3百万ドルを出資し、最大約7.0百万ドル相当の転換社債を2025年までに分割拠出する方針です。

技術革新への取り組みは研究開発拠点を軸にしており、ケルンを中心としたイノベーション体制で応用技術と工程開発を並行して進めています。応用技術チームは顧客と共同で試験・認証を行い、バッテリー向けの導電性グレードや高純度グレードなどの製品化を支援します。また、工程チームはコスト低減や品質改善、バイオ・循環原料の利用推進に取り組んでおり、特許管理や社内試験設備、パイロットラインを活用して製品の商業化を加速させています。従業員は約1,658名で、4つの技術拠点と世界各地のラボを通じて技術提供を行っています。