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- NAM TAI PROPERTY INC.
NAM TAI PROPERTY INC.NTPIF
事業内容
NAM TAI PROPERTY INC.は、中国本土を中心にテクノロジーパークなどの産業用不動産を保有・開発・運営する企業です。主力は高品質な産業オフィスやビジネスサービススペース、従業員用寮などを含むパーク開発で、既存の工業用地を再開発してイノベーション拠点に転換することに注力しています。
同社の主要な顧客は、研究開発や技術系の企業、工場から研究拠点へ移行する企業などのパーク入居者で、収益は賃貸収入と不動産の売却、並びに物件管理や各種付帯サービスの手数料が中心です。加えて、物件のリノベーションや短期的な賃貸運営による収入獲得を行う資産効率の高いモデルも採用しています。
事業は用地の企画・設計、建設(外部業者との協業)、販売・賃貸、入居後のプロパティマネジメントという流れで展開しています。設計や建設は信頼ある外部業者に委託しつつ、同社は計画・品質管理やマーケティング、入居支援、アフターサービスを内製で統括し、中央調達や第三者管理会社と連携してコストと品質をコントロールしています。
経営方針
同社は2014年の事業転換以降、持ち株的製造業から産業用不動産の開発・運営へ重心を移し、Nam Tai Inno Park、Nam Tai Technology Center、Nam Tai Inno Valleyを地域のランドマークに育てることを成長の中心目標としています。財務面では2020年末の純流動負債が約5,600万ドル、経営陣が見積もる今後12か月の資金需要は約5.12億ドルと高水準にあるため、同社は賃貸率の向上や物件の速やかな引渡し・事前販売によるキャッシュ創出を優先し、運転資金の確保を図ることを目指しています(注:一時的に一部銀行借入約1.23億ドルがデフォルト状態にある点はリスク要因です)。
重点投資分野はハイテク系の産業用・オフィス型不動産とそれに付随するサービスで、賃貸を中心とする資産効率の高い「アセット・ライト」モデルを採用しています。同社は賃借物件の再ポジショニングや改装による付加価値創出、設計や施工を入札で外部に委託する一方で中央購買や品質監督を通じてコスト管理を徹底しており、こうした運営ノウハウとKaisa Groupとの戦略的協力による人材・資金ネットワークを差別化要因としています。
新市場開拓と事業拡大では、粤港澳大湾区を主軸に第一・第二級都市への展開を進める計画です。従来の技術パーク運営モデルを他地域や他種の産業用物件へ横展開することで収益源を多様化することを目指しており、当面はリーシングの加速、プロジェクト売却や増債・増資(権利発行等)といった手段を組み合わせて流動性問題に対応する方針です。なお、2020年10月の私募で発行した計1,825万株(16,051,219株と2,603,366株、1株当たり9.15ドル)は2021年3月3日に裁判所で無効と判断されるなど、資金調達とガバナンス面での不確実性も存在します(発行済株式数は2020年末で39,197,991株、上位株主3者で約56%保有)。
技術革新については、同社はプロジェクトにセンサーを組み込んだ建物自動化システムを導入し、入居企業の利便性やエネルギー効率を高める取り組みを進めています。設計段階から入居者ニーズを反映したユニット設計や、建設工程のリアルタイム監視による品質管理、外部の物件管理会社との連携によるサービス提供まで含めた「フルチェーン」型の産業サービスを強化しており、人材確保のためのストックオプション制度(過去の付与例:2018年に1,320,000オプション、2020年に合計1,825,000オプション付与)などで技術・運営力の維持を図っています。