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INSPERITY, INC.NSP
事業内容
Insperity, Inc.は米国の中小企業向けに人事(HR)と業務改善の総合ソリューションを提供する会社です。同社はもともとPEO(プロフェッショナル・エンプロイヤー・オーガニゼーション)として創業し、給与計算、福利厚生管理、労務コンプライアンスなどを一括して請け負うフルサービス型のHRアウトソーシングを主力としています。
同社の主要顧客は従業員数の少ない企業から中規模企業で、特に150名以上のミドルマーケットも重視しています。収益は従業員一人あたりの月額手数料や各種サービス料、保険や退職給付の管理に伴う手数料が中心で、クライアントと共同雇用の形で雇用関連業務を引き受けることで安定的な収入基盤を確保しています。
事業は大きくPEO型の包括的ソリューション(Workforce Optimization)と、コストを抑えた中規模向けのWorkforce Synchronization、伝統的な給与・人事管理のWorkforce Accelerationに分かれています。加えて採用支援、雇用調査、退職サービス、保険関連などの個別商品や、Insperity Premierというクラウド型人事プラットフォーム、そして現地担当者によるコンサルティングを組み合わせて顧客の生産性向上を支援しています。
経営方針
同社は長期的に米国の中小企業向けに「最良の人事サービス」を提供することを成長戦略の中心に据えています。2024年の売上高は約66億ドル、調整後EBITDAは約2.7億ドル、平均WSEE(クライアントの被雇用者数)は約307,261人で、収益はWSEEあたり月額約1,785ドルです。経営は新規顧客獲得、既存顧客の維持・拡大、及びWSEEあたり収益の向上を通じて成長を図る方針で、特に中堅市場(概ね150〜5,000人)への浸透強化を重視しています。
重点投資は自社のPEO(共雇用)型HRアウトソーシングであるWorkforce Optimizationと、低価格のWorkforce Synchronization、そして自社のクラウド人事プラットフォーム「Insperity Premier」に向けられています。差別化要因としては業界平均を大きく上回る手厚い社内支援体制があり、過去の調査期間で社内スタッフ比率は業界平均より約57%高く、WSEEあたりの粗利益と営業利益はそれぞれ約119%・146%上回ってきた点を掲げています。Workforce SynchronizationはWSEEの約15%を占め、ミドルマーケット約26%の比重維持など、顧客層に応じた商品ミックスで収益性を高めています。
新市場開拓と事業拡大では、有機的成長に加え戦略的提携・投資・買収を柔軟に活用する方針です。具体的には地域ごとに市場選定モデルを用い、デジタルやテレビ広告、PGAツアーのスポンサーシップやジム・ナンツ氏を起用したブランド施策で認知を高め、新規リードを獲得しています。また販売プロセスは小規模クライアントで約90日、中堅は180日超と段階的で、販売力強化のための専任チームやクロスセル(伝統的な給与・人事サービスへの誘導)も推進しています。一方で他社との提携や買収には統合リスクがあると認識し、慎重に進めています。
技術革新には多額の資源配分を行っており、最大の取り組みがWorkdayとの戦略的提携による共同ソリューション開発です。同社はWorkday基盤での人事管理機能と自社PEOシステムの統合、さらに複数の第三者ベンダーとの連携を目指しており、開発・実装に相当の費用と人員を投じています。サイバーセキュリティとガバナンス面でも、SVP-ITS(最高技術責任者に相当)が社長兼COOへ直接報告し、取締役会のリスク管理委員会へ定期報告を行う体制を敷くなど、技術投資とリスク管理の両面で取り組んでいます。