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NuStar Energy L.P.NS
事業内容
NuStar Energy L.P.は米国を中心に事業を展開する中流エネルギー会社で、主に原油や精製品、再生燃料などのパイプライン輸送と貯蔵・ターミナル運営を行っています。同社は港湾や内陸にある大型の貯蔵施設と鉄道・パイプライン接続を備え、受入れから保管、積出しまでの一連の物流サービスを提供しています。
同社の主要顧客には大手の石油生産会社、統合石油企業、トレーダー、化学メーカーや精製業者が含まれます。収益は保管料や通過料といった契約に基づく手数料が中心で、最低利用量の取り決めや長期契約により収益の安定化を図る一方、燃料販売事業は市場価格の影響を受けやすい構造です。
事業は大きくパイプライン、貯蔵(ターミナル)、燃料販売の三つのセグメントに分かれています。パイプラインは主に輸送を担い、貯蔵は長短期の保管に加えて混合や添加剤注入などの付帯サービスを行い、燃料販売は卸売や一部小売向けの供給・販売を担っています。
経営方針
同社は短期的には自己資金による運営を重視しており、2024年も経費、分配金、設備投資を2021〜2023年と同様に内部発生のキャッシュフローで賄う計画です。財務基盤の強化策としては、2023年3月に本社施設を1.03億ドルで売却して4,110万ドルの売却益を計上しリボルビング・クレジットの返済に充てたほか、同年8月に1,495万口の普通持分を1口当たり15.35ドルで発行し約2.22億ドルの純収入で借入を返済するなど、負債構成と流動性の管理に注力しています。また、2023年6月にはリボ金利枠の満期を2027年1月27日まで延長するなど、資金調達の安定化を図っています。
同社は投資の重点をパイプラインと貯蔵・ターミナル事業、特に再生可能燃料の流通基盤に置いています。多くのパイプラインでは2023年7月の運賃指数連動の改定が収入にプラス寄与しており、インフレの影響をある程度は契約上の料金改定で転嫁できる構造を持っています。貯蔵セグメントでは契約料金や最低利用量契約があるため需要変動に対して比較的耐性がある一方で、St. JamesやCorpus Christi North Beachなどはいまだ世界経済の不確実性により収益が下押しされており、セグメントの約39%を占める主要顧客への依存度など顧客集中リスクもあります。差別化策としては、混合・添加剤注入などの付加サービスや地域別のネットワーク(西海岸の再エネ拡充、ユニットトレイン設備など)に投資して顧客の多様なニーズに応える方針です。
同社は事業拡大として西海岸を中心に再生可能燃料向けの貯蔵プロジェクトを完成・継続開発し、再エネ燃料の流通容量を拡大する計画です。これらの資本支出は想定どおりの市場環境や規制承認、人材・資材の確保に左右されるため同社は財政規律を維持して段階的に進める方針であり、必要に応じて追加の資金調達(株式や債務)も検討する柔軟性を保っています。なお、2024年1月にSunocoとの間で合併契約(株式による買収)が公表されており、統合の成立や条件によっては成長計画や資本配分が変化する可能性があります。
同社は技術革新とオペレーションの堅牢化にも投資しており、サイバーセキュリティ面では外部監査、ベンダー管理、エンドポイント監視、アクセス管理、ログ監視(SIEM)、多要素認証、脆弱性対応など複数の対策を運用しています。インシデント対応計画の整備や演習、事業継続・災害復旧計画、人材向けの年次教育も実施しており、これらへの継続的な投資が運用の安定性と顧客信頼の確保につながると同社は考えています。加えて品質管理や混合サービスの技術を強化することで、顧客の製品仕様を満たしクレームリスクを低減する取り組みも進めています。