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Ingevity CorpNGVT
事業内容
Ingevity Corporationは、浄化・保護・機能向上を目的とした化学製品や素材を開発・製造し、再生可能原料を活用したサステナブルなソリューションを提供しています。同社の主力には自動車や産業向けの活性炭、道路施工向けの添加剤、トールオイル由来の化学品、そしてカプロラクトン系の高機能ポリマーがあります。
同社は自動車メーカーや道路工事業者、塗料・接着剤・医療機器メーカーなど幅広い顧客に直販と代理店網で販売しています。2024年は上位10顧客で全社売上の約38%を占めた一方、単一顧客が売上の10%を超えることはなく、受注ベースの取引が多いため売上は顧客ごとに変動しやすい構造です。
事業は大きく三つのセグメントに分かれており、性能素材は主に活性炭を中心に自動車の蒸発排出対策や産業向け浄化用途を担当しています。パフォーマンスケミカルズでは道路用添加剤(Evothermなど)、舗装保全材、工業用特殊化学品やトールオイル由来製品を扱い、先端ポリマーは塗料・接着剤・エラストマー・バイオプラスチックや医療用途向けのカプロラクトン系材料を展開しています。
経営方針
同社は短中期で収益性を重視した成長に注力しており、2025年の目標として売上高を13億〜14億ドル、Adjusted EBITDAを4億〜4.15億ドルと見込んでいます。特に利益率の高いPerformance Materials(同社の活性炭等を扱う事業)を安定したキャッシュジェネレーターと位置づけ、セグメントEBITDAマージンを概ね50%前後で維持することを目指しています。一方で、2024年は再編による影響で総売上が落ち込んだものの(2024年売上14.06億ドル、2023年17.92億ドル)、ポートフォリオ再構築の効果として既に粗利で約6800万ドルの改善が表れており、同社はこれを踏まえた「より高収益な売上構成」への転換を進めています。
重点投資分野は大きく三つに分かれます。まずPerformance Materialsでは自動車向けや新興のEV・水素車対応製品への技術投資により、化石燃料車向け需要の低下を補完することを狙っています。次にPerformance Chemicalsでは、低マージンの市場から撤退して高付加価値分野に注力する「リポジショニング」を実行しており、工業用スペシャリティ(industrial specialties)は2025年に1.6〜2.0億ドルの売上を想定、同セグメントのEBITDAマージンは一桁中〜高台を見込んでいます。最後にAdvanced Polymer Technologiesでは、持続可能性を打ち出すカプロラクトン系高付加価値ポリマーを軸に、セグメントEBITDAマージン約20%を目標に成長を図っています。研究・技術費は売上比で概ね2%前後を維持しており、製品差別化と品質で競争優位をつくる方針です。
新市場開拓や事業再編については、路面技術(road technologies)分野の強化と、非中核資産の戦略的見直しを並行して進めています。2022年に買収したOzark Materialsの技術を取り込み、舗装・マーキング製品のラインナップ拡充で公共インフラ需要を取りに行く一方、Performance ChemicalsのCTO(粗トール油)精製や一部工場(DeRidderやCrossettなど)のトランジション、北チャールストンのCTO精製施設に関する戦略的選択肢の検討など、資産最適化を通じた収益改善を図っています。また、資本配分では2022年に取締役会が5億ドルの自社株買い枠を承認しており、余剰資本の株主還元と成長投資の両面で柔軟に対応する計画です。
技術革新への取り組みでは、低温混合アスファルト添加剤「Evotherm」など環境負荷低減技術や、カプロラクトン由来の生分解性材料といった製品開発を推進しています。運用面ではERP導入を含む業務変革を進め、2023年に主要な移行を完了して効率化を進めたほか、情報セキュリティ面ではISO 27001に整合した体制を構築するなどデジタル・リスク管理を強化しています。加えて、原材料依存(CTOが2024年の原材料購入の約38%を占める)やエネルギーコストのボラティリティを踏まえ、代替原料や付加価値製品へのシフトで長期的な競争力を高める戦略をとっています。