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Noble Corp plcNE
事業内容
Noble Corp plcは、海上の油・ガス井を掘削するための移動式掘削装置を保有・運用し、これらを顧客に貸与して掘削工事を請け負う契約掘削サービスを主力事業としています。同社は安全管理や環境配慮を重視し、リグの稼働・運航を通じて収益を上げています。
同社の顧客は大手統合型や独立系、国営を含む石油・ガス事業者が中心で、契約形態は日単位の稼働料金(デイレート)や長期のチャーター契約が主です。収益はリグの稼働日数と契約期間に左右されるため、長期契約とスポット的な契約を組み合わせて収入の安定化を図っています。
事業構成は報告上「契約掘削サービス」を単一の事業区分として扱っており、艦隊には掘削船(ドリルシップ)、半潜水式、ジャッキアップ型といった複数タイプのリグを保有しています。これらのリグは世界各地で需要に応じて再配置され、稼働中・準備中・保管中といった状態が同社の収益やコストに直接影響します。
経営方針
同社は収益の拡大と株主還元の強化を成長の柱としています。具体的には、過去数年でPacific Drillingの統合、Maersk Drillingとの事業結合、そしてDiamond Offshoreの取得といった大型の企業買収を通じて事業規模を拡大しており、Maerskとの組み合わせやDiamondの取引により総額約20億ドルの対価を支払い、買収に伴って約18億ドルの有形固定資産が計上されました。また、株主還元では自己株式取得枠を段階的に拡大しており、2022年に公表した最大4億ドルに加え、2024年にさらに最大4億ドルを承認して合計で約8億ドルの買付枠を設定しています。こうした投資と資本政策によって契約の積み増しと稼働率の向上を目指しています。
同社は重点分野として高付加価値の海洋掘削設備と人材への投資を挙げています。具体的には、深海掘削に対応するドリルシップ(水深設計12,000フィート、掘削深度40,000フィートのユニットなど)や、厳しい環境下で稼働するハイスペックなジャックアップを保有・整備することで差別化を図っています。設備面では稼働中のリグのアップグレードや、コールド/ウォームスタック状態のリグの再稼働に向けた設備投資を進め、サービス面ではブローダーやサプライヤーとの長期サービス契約(例:年額約2,470万ドルの契約)を活用してメンテナンスと信頼性を高めています。人材面では約5,000名の従業員(うち約80%が海上勤務)を抱え、株式報酬や業績連動型報酬での確保・育成に注力しています。
同社は海外市場の開拓と事業領域の拡大にも積極的です。世界各地へリグを再配備するグローバルな運用を基本とし、ガイアナや米国メキシコ湾、ブラジル、ナイジェリア、北海など多地域での実績を持っています。顧客分布の偏りを是正するためにも、多様な商慣行や共同投資、リスク・リターン共有型の契約スキームなど新しいビジネスモデルの採用を進めており、これにより従来の掘削契約以外の収益機会を拡大しようとしています。加えて、非中核資産の処分や買収後の統合によるシナジー創出を通じて契約残高と稼働率のさらなる拡大を目指しています(例:2024年時点でExxonMobilが収入の約22%を占めるなど顧客比率の開示も行っています)。
同社は技術革新と運用の効率化を重視しており、安全性と環境配慮を兼ねた投資を進めています。リグの設計・改修による掘削能力向上に加えて、遠隔モニタリングや運用デジタル化、整備の標準化を通じた稼働率改善を実行しています。また、環境・社会・ガバナンスの取り組みを社内方針に組み込み、安全とコンプライアンスを優先する文化を醸成しており、半期ごとの従業員エンゲージメント調査や継続的な教育で人材力向上を図っています。これら技術・運用面の施策は、供給網の制約や部品調達リスクを踏まえつつリグの稼働性と収益性を高めるための具体的な投資として実行されています。